2011 Fiscal Year Annual Research Report
TRPチャネルによる大腸イオン分泌異常機構の電気生理学的解明
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22590201
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
清水 貴浩 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 准教授 (40353437)
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Keywords | イオンチャネル / 大腸 / Cl^-分泌 / 下痢 / ワサビ |
Research Abstract |
これまでに、ワサビの辛味成分であるアリルイソチオシアネート(AITC)がシクロオキシゲナーゼ代謝物を遊離産生することで、Cl^-分泌を引き起こすことを明らかにしている。そこで本年度は、AITCがどのようなメカニズムでプロスタグランジン類を産生するのかについて検討することを目的とした。近年、Transient Receptor Potential (TRP)カチオンチャネルが辛味受容体として機能することが報告されている。ワサビの辛味であるAITCはTRP ankyrin 1(TRPA1)チャネルが受容体として同定されていることから、ATIC誘導性C1^-分泌におけるTRPA1チャネルの関与について調べた。まず大腸粘膜における短絡電流に対してTRPA1チャネルの特異的阻害剤であるHC-030031の効果を検討したところ、高濃度のHC-030031存在下においてAITCにより生じるC1^-分泌は有意に抑制された。次にAITCが実際にプロスタグランジン類を遊離するのかを検討するために、エンザイム・イムノアッセイ法を用いて、遊離産生されたエイコサノイド(PGE_2、PGF_2α、TXA2)の定量を行ったところ、AITC処理により主に産生されるのはPGE_2であり、このPGE_2産生はTRPA1チャネル阻害剤存在下で減少した。これらの結果から、TRPA1カチオンチャネルがAITCによるPGE_2産生過程に関与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的は、大腸粘膜におけるAITCによるCl'分泌にTRPA1チャネルが関与するかを検討することであったが、TRPA1チャネル阻害剤が大腸粘膜のC^-分泌だけでなく、PGE_2産生をも抑制することから、AITCはTRPA1チャネルに作用することでPGE_2を産生し、Cl^-分泌を引き起こすメカニズムを提案できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、大腸においてAITCがTRPA1チャネルを介したPGE_2産生を促し、C^-分泌を引き起こすといったメカニズムを提案した。今後は、TRPA1チャネルおよびPGE_2合成酵素の発現部位を明らかにし、クリプト細胞のC1^-分泌とどのように連関しているのかを検討したい。さらに、TRPA1チャネルの介在の有無を直接的に検証するために、ノックアウトマウスを使用した実験も進めたい。
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