2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳内AMPKの睡眠ホメオスタシスおよび体温調節における役割とそのメカニズム
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22590224
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
勢井 宏義 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40206602)
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Keywords | 睡眠 / ホメオスタシス / ケトン体 / PPARα / APMK |
Research Abstract |
本課題は、睡眠のホメオスタシス機構において、脳内AMPKがどのように関わるかを明らかにすることが目的である。睡眠不足が糖尿病など、生活習慣病に関わる可能性が示唆されており、エネルギー代謝に重要な役割を担っているAMPKの作用メカニズムを明らかにすることは、生活習慣病の予防に重要なテーマと考える。23年度に向けて交付申請書には、実施計画として、AMPK遺伝子操作やオブとジェネティック手法による慢性睡眠不足モデルマウスの作成などを挙げた。しかし、AMPKの睡眠作用がPPARαを介する可能性が、22年度末から23年度初頭に明らかとなったことから、まず、PPARαの下流に存在する、睡眠ホメオスタシスにおけるキー物質を明らかにしたいと考えた。その結果、下記の項目が明らかとなった。 1.アンチセンス・オリゴヌクレオチドの脳室内投与によるPPARαの機能抑制は、ノンレム睡眠中のデルタ波を減弱させた。 2.一方、PPARαノックアウトマウスでは、ノンレム睡眠中のデルタ波が増強していた。 3.1.のマウスではケトン体比(アセト酢酸/βヒドロキシ酪酸)が低下していたが、2.のマウスでは逆に上昇していた。 4.ノンレム睡眠中のデルタ波を増強する断眠では、ケトン体比は上昇した。 5.脳室内にケトン体のひとつアセト酢酸を投与するとノンレム睡眠中のデルタ波が増強した。 以上などから、脳内のケトン体、とくにアセト酢酸、あるいはケトン体比が睡眠ホメオスタシスに深く関わっていることが明らかとなってきた。ケトン体は脂質代謝の最終的産物であり、また、神経細胞がエネルギー源として利用できる物質である。AMPK、PPARαに関して、両者ともその活性化はケトン体産生に働く。したがって、AMPKの睡眠に関わる働きは、ケトン体を介する可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究実施計画からは大きくずれてしまったが、本来の目的は、方向性を変えながらも達成しつつある。AMPKは睡眠ホメオスタシスに直接関わっている訳ではなく、下流に存在するケトン体が重要であることが分かってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
ケトン体がキー物質であることが明らかになったので、脳内のAMPKがケトン体産生にどのように関わるか、また、そのメカニズム、さらにケトン体がどのように睡眠中のデルタ波に関わるか、そして、そのメカニズムについてを本研究課題の新たなターゲットとする。
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