2011 Fiscal Year Annual Research Report
視床下部神経ペプチドによるげっ歯類性社会行動の調節機構
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22590229
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
近藤 保彦 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (00192584)
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Keywords | 視床下部室傍核 / 視索前野 / 扁桃体内側核 / 母性行動 / 嗅覚選好性 / オキシトシン / オキシトシン受容体 / ラット |
Research Abstract |
オキシトシンは視床下部室傍核で作られ軸索輸送によって下垂体後葉から放出され、子宮筋に作用して分娩を誘発し、乳腺平滑筋に作用して乳汁を射出するホルモンとして多くの教科書で記述されているが、近年、オキシトシンは脳内にも放出され、神経調節物質として他のニューロンの活動に直接影響することによってさまざまな社会行動に影響していることがわかってきた。しかしながら、ラットの脳室内にオキシトシンを直接注入すると母性行動が促進することが知られている一方、オキシトシン遺伝子を欠失させたマウスは、授乳に障害があるものの正常な母性行動を示すことが報告されている。そこで我々は、ラットの母獣が示す仔ラットの匂いに対する選好性を未経産、経産、および授乳中ラットで比較し、仔ラット刺激に対するオキシトシン産生ニューロンの活性化をcFos免疫組織化学によって測定した。経産および授乳中ラットは、仔ラットの匂い刺激に対して強い選好性を示すのに対し、1週間仔ラットに暴露した未経産ラットは仔集めなどの母性行動を示すにもかかわらず、匂いに対する選好性は示さなかった。また、経産および授乳中ラットの室傍核オキシトシンニューロンは、仔ラット刺激に対して活動を増加させたのに対し、未経産ラットでは活動を増加させることはなかった。また、未経産ラットと経産ラットの視索前野および扁桃体内側核のオキシトシン受容体発現における仔ラット刺激の暴露効果も検討したところ、経産・未経産で大きく反応が異なることもわかった。これらのことから我々は、ラットの出産子育て経験は、仔ラット刺激に対するオキシトシンニューロンの反応性を増進し、オキシトシン受容体の発現を変化させて仔ラットの匂いに対する選好性を引き起こしていると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年は、雄ラットの発情雌臭に対する嗅覚選好性に関する論文を2通公表するに至った(Dhungel et al.,Horm.Behav.,2010;Dhungel et al.,Neuroscience2010)。また、現在、本報告書で記載したラット母獣が示す仔ラット刺激に対する嗅覚選好性が神経ペプチドであるオキシトシンによって調節されていることを論文として投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらにオキシトシン遺伝子の欠失ラットを用いた研究をさらに進め、論文として発表していきたい。現在のところ、データとしては順調に集まりつつあり、このままの路線で研究を進めていきたいと考えている。
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Research Products
(10 results)