2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22590258
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
木村 由佳 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・神経薬理研究部, 非常勤(研究員) (60425692)
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Keywords | 硫化水素 / 酸化ストレス / グルタチオン / 神経細胞 / 細胞保護 / ミトコンドリア / GSH合成酵素 / システイン |
Research Abstract |
私たちは、硫化水素(H_2S)が未熟な神経培養細胞において、酸化的ストレスによる細胞死を防ぐことを報告した。これは、H_2Sにより内因性抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)が増大したためで、その機構としてH_2Sによりシスチン・グルタミン酸トランスポーターを介したシスチンの細胞内取り込みが増加しGSHの基質が増えたためと分かった。 本年度はこれに加えて、H_2Sにより細胞外シスチンがシステインに還元され、それが速やかに細胞に取り込まれてGSH合成に利用されることを見いだした。細胞内システイン増加は、非内在性の強力な還元剤β-メルカプトエタノール(β-me)やジチオスレイトールでも認められたが、H_2Sはβ-meなどと比べて、システインからGSHへの合成効率が高いこと、またGSH合成酵素阻害剤の抑制を受けにくいことから、H_2Sは、β-meとは異なり、GSH合成酵素を活性化することが示された。これはH_2Sが還元力に依存しない作用を持つことを示しており、H_2Sの作用の多彩さを説明する知見として興味深い。 またH_2S合成酵素の過剰発現によりミトコンドリア(MITO)のH_2S産生を増加させると、神経細胞が酸化ストレス抵抗性を示すようになることから、MTOで合成されたH_2Sがこのオルガネラ内の酸化ストレスを直接抑えていることも分かった。さらにH_2Sにより、MITOのGSHが大きく増加することも分かった。MITOはそれ自体ではGSHを合成できないため、H_2Sが細胞質からMITOへの輸送や取り込みに関わる可能性がある。つまり、細胞死のシグナル伝達の収束点として重要なMITOにおいて、H_2Sが積極的に細胞保護作用を発揮することを示唆している。H_2Sによる細胞保護作用の機構の解明は、酸化的ストレス関連の慢性疾患治療に直接貢献できると考えている。
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Research Products
(7 results)