2011 Fiscal Year Annual Research Report
c-Myc/Max転写複合体によるES細胞の未分化性維持の分子メカニズムの解明
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22590275
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
奥田 晶彦 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60201993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 英政 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (50292123)
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Keywords | ES細胞 / c-Myc / Max / 未分化性 / 自己増殖 / Myc module活性 / Core module活性 / 細胞移植 |
Research Abstract |
ES細胞は、Oct-3/4、Sox2などのpluripotency遺伝子が中核をなすCore module転写サブネットワークのみでは、未分化性を維持することができず、そのCore moduleとはほぼ独立している、c-Mycを中心とした転写サブネットワーク(Myc module)も同様に必要であるとされていた。但し、私たちは、c-Mycタンパク質が機能する上で必須なパートナー因子をコードするMax遺伝子のホモ欠失ES細胞を用いた解析から、c-Mycタンパク質、及び、その支配下にあるMyc module遺伝子群は、Oct-3/4のように、ES細胞の未分化性維持において絶対に必要なものではないことを証明し、平成23年度の成果として発表することができた。具体的には、ES細胞の新しい培養法として開発されたグランドステート培養条件下にES細胞を曝すことなどにより、ES細胞は、c-Myc非依存的に、無限の自己増殖性、及び多分化能を維持することができることを証明した。すなわち、c-Mycは、Oct-3/4等とは違って、ES細胞の維持に必須な遺伝子ではなくて、細胞の培養条件を工夫することなどでその必要性が無くなる、いわゆるcontext dependentなES細胞の未分化性維持遺伝子であることを証明した。c-Mycは、癌原遺伝子であり、このような遺伝子に、ES細胞が、自身が有する特筆すべき性質である無限の自己増殖性と、神経、筋肉、肝臓細胞等、あらゆる種類の細胞へと変換する潜在能力である全能性を依存している故に、ES細胞は、細胞移植の為の供給源として利用するには危険すぎる細胞であるという概念が強くあった。但し、私たちの研究成果は、その固定概念を払拭するものであると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グランドステート培養条件下にあるES細胞は、未分化性維持においてMycにそれほど大きく依存していなのではないかかという仮説を検討することが、本研究プロジェクトの最大の目的であり、その目的は達成することができた。かつ、得られた結果が、この条件では、c-Myc遺伝子が全く不必要であるというものであった故に、かなり大きなインパクトのある成果として発表することができた。但し、古典的な培養条件下で何故、ES細胞が未分化性維持においてc-Mycに大きく依存しているかという分子メカニズムに関しては全く解明できておらず、それ故、達成度として(2)を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
いわゆるサイトカインであるLIFと血清を用いた古典的なES細胞培養条件下にあるES細胞において、c-Myc活性を奪うと、未分化性を失うと同時に、激しい細胞死を呈することを確認しているが、何故、そのようなフェノタイプが出現するか、分子メカニズムを解明することができていないので、それを平成24年度の目標に研究を進めていきたいと考えている。
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Research Products
(4 results)