2011 Fiscal Year Annual Research Report
抗動脈硬化薬標的分子としてのスフィンゴシン-1-リン酸受容体の発生工学的研究
Project/Area Number |
22590284
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岡本 安雄 金沢大学, 医学系, 准教授 (80293877)
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Keywords | スフィンゴシン1-リン酸 / マクロファージ / 動脈硬化 |
Research Abstract |
平成23年度は以下の実験を行った。(1)スフィンゴシン1-リン酸2型(S1P2)受容体ノックアウト(KO)マウスは野生型マウスに比べ動脈硬化の程度が低いこと(Arteroscler.Thromb.Vasc.Biol.2011, 31:81)が報告されているので、マクロファージにおける変性LDLの取込みをDiIで蛍光標識したアセチルLDLを用いて検討した。野生型マウスおよびS1P2 KOマウスから腹腔マクロファージを調製し、アセチルLDLの取込みを検討した結果、野生型マクロファージと比較してS1P2 KOマクロファージでアセチルLDLの取込みの低下が認められた。以上の結果から、S1P2 KOマウスで観察される動脈硬化抑制にマクロファージの変性LDLの取込み低下が関与すると考えられた。(2)S1P2受容体阻害薬JTE013の投与が動脈硬化を抑制すること(Arteroscler.Thromb.Vasc.Biol.2011, 31:81)が報告されていることから、マウスにJTE013を経口投与した際の薬物動態を検討した。8週齢のマウスにJTEO13を25mg/kg経口投与後、15分から12時間後に採血し、血中のJTE013濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。投与後45分で最も血中濃度が高くなり、血中薬物の消失に4時間を有した。今後、以上の結果をもとに、JTE013の動脈硬化に対する効果を中型動物である動脈硬化ウサギを用いて検討したいと考えている。(3)S1P1受容体がマクロファージにおいて抗炎症作用を示すことが報告されている(Circ.Res.2008, 102:950)ことから、リポ多糖(LPS)刺激によるTNFα産生におけるS1Pの効果をマウスマクロファージ(RAW264細胞)を用いて検討した。RAW264細胞にはS1P1受容体とS1P2受容体が発現していた。RAW264細胞をS1P1受容体活性化薬SEW2871で前処理し、LPS刺激によるTNFα産生を測定したが、TNFαのmRNA発現およびタンパク発現に未処理群と差が認められなかった。(4)Alexa488で蛍光標識したzymozanを用いてRAW264細胞の貪食能を検討した。S1P刺激によりzymozanの貪食が増加したが、S1P1受容体遮断薬W146処理によりS1Pによる貪食が増強した。以上の結果から、マクロファージのS1P1受容体は貪食能に対して抑制性に働いていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は主にS1P1、S1P2、S1P3受容体を介して作用するが、SIP受容体サブタイプにおける動脈硬化に対する作用は、当初より複雑になってきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は主にS1P1、S1P2、S1P3受容体を介して作用するが、S1P受容体サブタイプにおける動脈硬化に対する作用は、当初より複雑になってきた。今後、本研究課題の推進のためにこれらの複数の受容体に作用するS1Pの産生酵素であるスフィンゴシンキナーゼ(SphK)の動脈硬化に対する作用を解析する必要があると考えている。SphKはSphK1とSphK2があり、最近それらの役割の違いが示唆されている。本研究課題では生体内で主なS1P産生酵素であると考えられているSphK1に着目し、動脈硬化モデルマウスとSphK1トランスジェニックマウスおよびSphK1ノックアウトマウスを交配させ、作出したマウスを用いてSphK1の動脈硬化に及ぼす効果について検討する。
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