2011 Fiscal Year Annual Research Report
国内外のIgA腎症病理組織分類の検証に関する臨床病理学的後ろ向き研究
Project/Area Number |
22590326
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
城 謙輔 東北大学, 大学院・医学系研究科, 非常勤講師 (10057086)
|
Keywords | IgA腎症 / 組織分類 / 多国籍 / 予後予測因子 / 腎生検 / 病理 / Oxford分類 / 組織学的重症度分類 |
Research Abstract |
IgA腎症組織分類(国際分類と日本分類)は、いずれも腎機能予後不良を予測する病理パラメータから成立しているが、そのエヴィデンスを出すためのコホートや統計的手法が異なるため、異なった組織分類となっている。そこで、それぞれの分類を同じコホートで検証し、統一した組織分類をめざして改良することを目的とした。厚労省科研IgA腎症分科会に登録された成人IgA腎症の118症例を用いた。日本分類の組織学的重症度分類grade I-IV(急性病変A,慢性病変C,A/C)、そして、国際分類におけるMEST(M;メサンギウム細胞増多、E;管内性細胞増多、S;分節状硬化・癒着、T;間質線維化・尿細管萎縮)スコアにて各症例を分類し、それぞれの分類の各群間での臨床データの識別能力について統計的に検証した。臨床データとして、腎生検時のeGFR、eGFRの傾き(6~48ヶ月間)、1日蛋白尿を用いた。その結果、日本分類のgradeはeGFRと1日蛋白尿で群間に有意差を認めたが、eGFRの傾きでは有意差がなかった。また、日本分類の急性病変はeGFRの傾きと1日蛋白尿で有意差を認めた。一方、Oxford国際分類のMESTでは、1日蛋白尿においてすべての病変で有意差を認めたが、eGFRにおいてはMとTのみしか有意差がなかった。eGFRの傾きは、すべての病変の群間で有意差を認めなかった。以上、日本分類のgradeとOxford分類のMTは、腎生検時腎機能と蛋白尿の指標となったが、6~48ヶ月間のeGFRの傾きでは群間の有意差を認めなかった。日本分類の急性病変に限るとeGFRの傾きで有意差が認められた。以上の結果から、日本分類にはMETの評価がないため、腎機能ならびに蛋白尿予後の臨床的観点から、lumped systemの日本分類とsplitsystemの国際分類の両者を併記する必要が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災における損害の修復のため、4ヶ月間、研究継続の停止を余儀なくされた。その後、研究体制は戻ったが、これまでの成果の論文化が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
IgA腎症の組織分類は、コホートを亜分類し、その臨床予後を予測するうえで重要な情報となる。 しかし、治療介入により、その臨床予後が影響される。その観点から、治療前に行われる腎生検の病理評価に組織分類を用いて、治療介入により治療に奏功するする群としない群を分別するために、組織分類が役立つかどうか、役立つとすれば、日本分類と国際分類のどちらが有効かを検証する方向に進展させたい。
|