2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22590330
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
竹下 淳 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 運動器疾患研究部, 室長 (50263009)
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Keywords | 骨代謝 / 骨粗鬆症 / 骨吸収 / 転写因子 |
Research Abstract |
活性化破骨細胞で特異的に発現する新規カップリン遺伝子の転写制御メカニズムの解明と、新規骨粗鬆症治療薬のリード化合物の創出を目的としたカップリン遺伝子の転写促進する化合物の同定を試みた。カップリン遺伝子は、インビトロで破骨細胞を象牙片上で培養すると発現上昇する遺伝子としてクローニングしたが、ハイドロキシアパタイト(HA)片上で培養するとさらに発現上昇することを見出した。この発現上昇は骨吸収抑制剤であるアレンドロネートとカルシトニン、及びプロトンポンプ阻害剤であるパフィロマイシンA1の添加で発現低下した。HAが酸による分解を受け、イオン化することがカップリンの発現上昇を促進すると考え、破骨細胞の培養液中にカルシウムやリン酸を添加して培養するとカップリン遺伝子の発現が上昇した。また、マウスに破骨細胞分化因子であるRANKLを投与すると骨におけるカップリン遺伝子の発現が上昇し、一方、アレンドロネートを投与するとその発現が低下することからマウスの生体内においても骨吸収による局所でのカルシウムの上昇が破骨細胞におけるカップリン遺伝子の発現を正に制御することを突き止めた。さらに、マウスにおいてこの遺伝子発現を上昇する化合物1種類を同定することに成功した。 骨吸収により発現が制御される遺伝子についてはこれまでに報告された例はない。本研究で、カップリン遺伝子が骨吸収により遊離されたカルシウム等のイオンが引き金となって発現上昇し、骨芽細胞に作用し骨形成を促進するカップリング因子として働くことを突き止めたことは、骨代謝を理解する上で極めて意義深い。既にカップリン遺伝子発現を促進する化合物を同定したことは、カップリン遺伝子の転写制御メカニズム解明に有力な武器となるだけではなく、骨カップリング因子をターゲットとした斬新な切り口の新たな骨粗鬆症治療薬を目指した創薬のリード化合物になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は破骨細胞の骨吸収による何がカップリン遺伝子の発現を制御しているのか全く不明であったが、骨の代わりにHAを用いても破骨細胞がHAを溶かして発現上昇することを突き止め、細胞外カルシウム濃度の上昇に応答して発現が制御されることが判明した。このことで目的とする骨吸収による新しい転写制御機構の一端の解明に近づいた。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞外カルシウム濃度に依存して転写制御されるカップリン遺伝子の発現制御機構を解明するために、カルシウムレセプターが関与するかどうかをshRNAの技術をもちいて解析する。関与しない場合には破骨細胞における新たなカルシウムを受容する分子を探索する。カップリン遺伝子のプロモーターでカルシウムに応答する領域を解析する。
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