2011 Fiscal Year Annual Research Report
乳腺の前癌病変:疾患概念の確立と臨床病理学的意義の検証
Project/Area Number |
22590340
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
森谷 卓也 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00230160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 貴 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10261629)
紅林 淳一 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (10248255)
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Keywords | 乳癌 / 病理 / 非浸潤癌 / 前癌病変 / 免疫組織科学 |
Research Abstract |
乳癌には、短期間で進行する高悪性度の癌と、進行癌に至るまでに長い時間を要する低悪性度の癌が存在する。異なる進行過程を示す乳癌は、前癌や早期癌時点での細胞性格をある程度保持しながら進行してゆくものと推測される。そこで、早期癌の代表である、浸潤能を獲得していない非浸潤性乳管癌や、さらに前段階の前癌病変を収集し、種々のマーカーで免疫組織染色を実施し、その特徴を検討して、浸潤性乳癌への進行するスピードの予測や、進行した場合の治療戦略の参考になる因子の探索を行うことを研究の主目的とした。平成22年度は、非浸潤性乳管癌症例について検討を行い、ホルモン受容体陽性・HER2陰性型の癌(Luminal A型、低悪性度と目される)で発現するマーカーを明らかにした。また、その対極に位置づけられるトリプルネガティブ(2種類のホルモン受容体とHER2が陰性)型の癌では、アポクリン化生上皮マーカーの発現が高頻度に起こり、他のマーカー発現から見ても、進行したトリプルネガティブ乳癌とはやや性質が異なることを明らかにした。平成23年度には、この2つの型以外の非浸潤性乳管癌の性質を含めて乳癌の多彩性を明らかにすべく、症例の追加と、マーカーの大幅な追加を行った。染色が終了したため、結果解析と公表の準備を行っている。次に、前癌病変については、異型乳管過形成、異型小葉過形成などがそれに相当するが、いずれも低悪性度乳癌の前駆病変と目されるものである。高悪性度乳癌の前駆病変に関する知見はほとんどないため、既診断例(高悪性度乳癌の背景病変)の病理標本についてヘマトキシリン・エオジン標本のみでの再検討を行ったが、前癌と目される像は発見できなかった。低悪性度病変の前癌病変については、遭遇頻度が高いものとは言い難いため、関連施設の症例も含めて再検討し、マーカー検索可能な症例の追加を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成22年度から継続している、非浸潤性乳管癌に関する検討において、染色する抗血清の種類を大幅に増やしたために、結果を得るまでに時間を要した。23年度終了時で染色は終了しているため、早期の学会発表や論文化を目指す。最終目標である前癌病変に対する検討は、自験例が予想以上に少ない状況であったため、関連施設を加えた研究を行うべく倫理申請をした後、過去の診断症例について見直しを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
非浸潤性乳管癌に関する免疫組織学的な解析を進め、年度内の論文化を目指す。 前癌病変については、関連施設を含めた再検討で症例の追加ができたため、非浸潤性乳管癌の研究成果をふまえて染色を実施する。 進行乳癌(浸潤性乳癌)の進行や予後に関わるマーカーが次々と報告されているので、関連論文を常時渉猟し、可能な染色を追加する。
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Research Products
(12 results)