2012 Fiscal Year Annual Research Report
ワールブルグ効果代謝低分子産物が、がんー間質相互作用を介してもたらす影響の解析
Project/Area Number |
22590342
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
藤井 元 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (90321877)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | がん間質相互作用 / ワールブルグ効果 |
Research Abstract |
がん組織特異的な代謝変化であるワールブルグ効果などによって、腫瘍組織周辺では乳酸などの代謝低分子産物濃度が局所的に上昇していることが明らかになっている。本研究計画は、このワールブルグ効果代謝産物による局所的な濃度変化が、がん間質相互作用を介して腫瘍組織の維持・成立・増悪にもたらす分子的影響に関して、 1) 代謝低分子産物の生理的濃度変化が腫瘍細胞・間質細胞に引き起こす発現変動の網羅的探索 2) 前項で得られた分子群のそれぞれの組織における発現変化の解析 3) 分子群発現までのシグナル経路の解析と周辺環境因子変動の影響 4) 濃度変動がもたらすマウス移植モデルでの腫瘍組織への影響の検討 を行うことで、この様な環境要因と細胞要因の双方に密接に関連した事象への理解を深めると共に、今後の研究展開に必要な基礎的な知見を得ることを目的としている。 これまでに腫瘍細胞/間質細胞という2種の細胞が混在した共培養モデル実験系においての網羅的発現解析を行い、そのデータにバイオインフォマティックスベースの解析技術を応用する事で、実験系における個々の細胞群の混在割合を推定し、その複合的な発現プロフィールを半独立的に解析することに成功している。その結果、乳酸などの代謝低分子産物濃度変化に応じてその発現を変化させる応答分子群候補を腫瘍細胞サイド・間質細胞サイドのそれぞれで複数個選び出し、定量的逆転写PCRや抗体を利用しての免疫染色などで、解析に用いた共培養インビトロ系におけるこれら分子の実際の発現変動を確認した。当該年度までに腫瘍組織の維持・成立・増悪に実際に機能していると考えられる有力なワールブルグ効果代謝産物応答遺伝子候補を選び出すことに成功していると判断しても良いと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに腫瘍細胞/間質細胞という2種の細胞が混在した共培養モデル実験系においての網羅的発現解析を行い、そのデータにバイオインフォマティックスベースの解析技術を応用する事で、実験系における個々の細胞群の混在割合を推定し、その複合的な発現プロフィールを半独立的に解析することに成功している。さらに、乳酸などの代謝低分子産物濃度変化に応じてその発現を変化させる応答分子群候補を腫瘍細胞サイド・間質細胞サイドのそれぞれで複数個選び出し、定量的逆転写PCRや抗体を利用しての免疫染色などで、解析に用いた共培養インビトロ系におけるこれら分子の実際の発現変動を確認した。これにより腫瘍組織の維持・成立・増悪に実際に機能していると考えられる有力なワールブルグ効果代謝産物応答遺伝子候補を選び出すことに成功している点では、計画全体はおおむね順調に進展していると考えている。また昨年度から実施している代謝低分子産物構造類似物質や、ワールブルグ効果の様な細胞内の基本的代謝活性に変化をもたらす事が期待される阻害剤・ 活性化剤と言った薬剤を共培養系に添加した時の発現変動を継続して調べる実験系も、多少の滞りは有ったものの、ほぼ予想通りに進められている。 一方、臨床検体での発現解析/局在の検討や、担がんマウスなどの実験動物を用いたインビボ環境での発現変動といった部分では、ワールブルグ効果代謝産物応答遺伝子候補の選択や薬剤を利用した機構解明実験に予想より時間がかかってしまった事や、サンプル調整などにおいて計画中に幾つか難しい部分が発覚し、当初の予定に照らし合わせるとやや遅れが生じている。 そこで、最終年度はこれらの点を重点的に実験する事で、研究計画全体の進展の調整をはかりたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、がん細胞/間質細胞という2種の培養細を共培養させる実験系を開発し、これをモデル系として利用することで、腫瘍組織の維持・成立・増悪に実際に機能していると考えられるワールブルグ効果代謝産物応答遺伝子の有力候補を選び出すことにほぼ成功していると考えている。 そこで研究計画最終年度である本年度は、最後のまとめとして従来行ってきたワールブルグ効果代謝産物がもたらす種々の特殊な環境下での発現変動解析をさらに詳細なレベルで継続すると共に、担がんマウスなどの実験動物を用いたインビボ環境での発現変動や、昨年実施出来なかった臨床検体での発現解析/局在の検討を、適切な症例で、順次集中的に行っていく予定である。これらの解析によりワールブルグ効果代謝産物応答遺伝子群の実際の腫瘍組織におけるインビボレベルでの重要性を示す事が可能であると期待している。 また昨年度から実施している代謝低分子産物構造類似物質や、ワールブルグ効果の様な細胞内の基本的代謝活性に変化をもたらす事が期待される阻害剤・ 活性化剤と言った薬剤を共培養系に添加した時の発現変動も継続して調べていく事で、代謝低分子産物応答性の分子発現に関するシグナル伝達経路上流に関する知見を得ることも、本年度で積極的に行なう予定でいる。 上記実験を複合的に実施する事で、腫瘍における特徴の1つとして近年とみに着目されているがん組織に特異的な代謝変化であるワールブルグ効果によって産生される乳酸などの代謝低分子産物が、がんー間質相互作用を介して、腫瘍組織の維持・成立・増悪にどのような関与/影響を持ちうるのかという、がんの生物学における重要な分子メカニズム解明への手がかりの一端が明らかになると考えている。
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[Journal Article] Diagnostic and prognostic significance of the alternatively spliced ACTN4 variant in high-grade neuroendocrine pulmonary tumours.2013
Author(s)
Miyanaga, A., Honda, K., Tsuta, K., Masuda, M., Yamaguchi, U., Fujii, G., Miyamoto, A., Shinagawa, S., Miura, N., Tsuda, H., Sakuma, T.,, Asamura, H., Gemma, A., Yamada, T.
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Journal Title
Ann Oncol.
Volume: 24
Pages: 84-90
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Involvement of inflammatory factors in pancreatic carcinogenesis and preventive effects of anti-inflammatory agents.2013
Author(s)
Takahashi, M., Mutoh, M., Ishigamori, R., Fujii, G., Imai, T.
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Journal Title
Semin in Immunopathol,
Volume: 35
Pages: 203-227
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Suppressive effect of pioglitazone, a PPAR gamma ligand, on azoxymethane-induced colon aberrant crypt foci in KK-Ay mice.2012
Author(s)
Ueno, T., Teraoka, N., Takasu, S., Nakano, K., Takahashi, M., Yamamoto, M., Fujii, G., Komiya, M., Yanaka, A., Wakabayashi, K., Mutoh, M.
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Journal Title
Asian Pac. J. Cancer Prev.
Volume: 13
Pages: 4067-4073
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Novel compound SK-1009 suppresses IL-6 expression through modulation of activation of NF-kappaB pathway.2012
Author(s)
Shimura, M., Yamamoto, M., Fujii, G., Takahashi, M., Komiya, M., Noma, N., Tanuma, S., Yanaka, A., Mutoh, M.
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Journal Title
Biol. Pharm. Bull.
Volume: 35
Pages: 2186-2191
DOI
Peer Reviewed
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