2011 Fiscal Year Annual Research Report
トリパノソーマ原虫に発現する複合糖鎖の生合成機構および機能に関する研究
Project/Area Number |
22590385
|
Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
中西 雅之 松山大学, 薬学部, 准教授 (00281048)
|
Keywords | 寄生原虫 / Trypanosoma brucei / アフリカ睡眠病 / 糖転移酵素 |
Research Abstract |
Trypanosoma bruceiは,アフリカ睡眠病の原因原虫である.T.bruceiは細胞表面に様々な複合糖鎖を発現しており,これらが哺乳類宿主中での生存に重要な役割を果たすと考えられている.本研究で標的としている遺伝子(Tb927.8.7140~7160)は,この複合糖鎖の合成に関わる糖転移酵素をコードすると推測され,8番染色体にタンデムに並んでいる(7160は偽遺伝子と考えられる).本研究では,これら遺伝子をノックアウトまたは過剰発現させた原虫株の解析からそれらの機能に迫ろうとしている.本年度はTb927.8.7140遺伝子のノックアウト株のプロテオーム解析により,N型糖鎖の分子量が野生型のそれに比べて低下するタンパク質を同定した.加えて,実験条件の変更により,これまで作製できなかったTb927.8.7150遺伝子のノックアウト株の取得に成功した.本株の性状を解析し,7150遺伝子は培養系でのT.bruceiの生存に必須ではないことを明らかにした.また,種々のレクチンとの反応性においても顕著な変化認められなかった.この点で,先の7140遺伝子との機能の違いが示唆される.また,これら遺伝子産物のオルガネラ分布を明らかにするために,3'末端にHAタグ遺伝子を付した標的遺伝子を過剰発現させ,蛍光抗体法による解析を進めた.以上の結果,標的酵素の機能する場とその機能についての知見を得た.しかし,標的遺伝子がコードするタンパク質の機能については,酵素反応レベルでの裏付けがあることが望ましい.そこで,今後はこれら遺伝子を無細胞タンパク質合成システムを利用して合成し,その酵素活性を中心に解析する予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子ノックアウト株および遺伝子過剰発現株の作製は日数を要し,不確定要素も多い作業であるが,それらの樹立に成功しており,ここまでは概ね計画通りに進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,解析に必要な試料量に対し,得られる試料量が少なくなるため,ある程度の困難が予想されるが,実験スケールの拡大と解析装置の高感度化により対応する予定である.
|