2010 Fiscal Year Annual Research Report
病原性大腸菌の初期感染時における免疫反応抑制機構の解析
Project/Area Number |
22590389
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸邉 亨 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70207596)
|
Keywords | 病原性 / O157 / 病原因子 / 炎症応答 / III型分泌 |
Research Abstract |
腸管出血性大腸菌(EHEC)や腸管病原性大腸菌(EPEC)の上皮細胞感染における炎症応答抑制に関与する病原因子を同定するために、まず菌株の作成とアッセイ系を構築した。特に菌株は、非病原性大腸菌K12株をもとにEPECよりIII型分泌装置と細胞付着に必須の遺伝子領域を導入した再構成株を使用した。感染細胞の炎症応答は、ケモカインIL-8の分泌およびNF-κB依存性ルシフェラーゼ遺伝子の発現により測定した。まず、再構成株にIII型分泌タンパク質を個別に発現させ、培養上皮細胞に感染させた後、細胞より分泌されるIL-8を測定した。その結果、少なくともNleCとNleEの2つの因子に炎症応答抑制作用があることを見いだした。さらに、NF-κB依存性ルシフェラーゼ遺伝子も用いて影響を測定したところ同様に抑制がみられた。そこで、NleCについて機能解析をすすめたところ、NF-κB活性化を阻害すること、さらにNF-κBのサブユニットであるp65(RelA)を切断し、分解を促進することを明らかにした。NleCのアミノ酸配列のなかにmetalloproteaseの活性部位の配列と相同な部位を見いだしたが、実際にin vitroで変異を導入したNleCがp65切断活性を失うことや、キレート剤の添加により活性が失われることを検証し、NleCはmetalloproteaseであると結論できた。EPECからnleCを欠損させると、炎症応答抑制能がわずかではあるが弱くなった。一方、nleEの欠損も部分的な抑制能の減弱しか見られなかった。そこで、nleCおよびnleE両遺伝子を同時に欠損させたところ、III型分泌装置欠損株と同程度まで抑制能の減弱がみられた。以上の結果より、NleCはNleEと加算的あるいは相乗的にNF-κB活性化経路に作用していると考えられた。
|
Research Products
(4 results)