Research Abstract |
腸管や気管の粘膜バリアは生体内外の境界に位置し,感染防御に極めて重要であるが,皮膚の表皮バリアよりも脆弱で主要な感染門戸にもなっている。粘膜バリアには上皮細胞間接着構造のみならず,それを裏打ちするアクチン細胞骨格が重要であると考えられている。申請者はマクロファージのアクチン結合タンパクであるPlastinを同定した。そのイソフォームは上皮細胞にも発現され,粘膜バリアにおいて重要であることが最近示されたが詳細は不明である。本研究は,感染防御と感染門戸の両面で重要な粘膜上皮細胞のPlastin骨格系の動態を解析し,粘膜バリアの動的機能の分子基盤を解明することを目的とする。 平成23年度は,前年度に調製したPlastin1(マウス腸管上皮に発現される)のリコンビナント蛋白質を抗原として高力価抗体を作成した。抗Plastin2,3抗体は既に調製されている。次ぎに,経気道感染する細菌種をもちいて,気管支上皮および肺胞上皮の細胞骨格の変化を解析した。マウスに経気道感染させた後,経時的に肺の標本を作製し,上皮細胞内のPlastin1,アクチン,その他の細胞骨格タンパクの局在変化を,特異抗体をもちいて免疫組織学的に観察した。感染の程度と上皮バリア機能は逆相関することを基に,バリア機能と細胞骨格変化との関連を解析する。 粘膜上皮のバリア機能を,Plastinを中心とする細胞骨格系のダイナミクスに基づいて解明することは,独創的チャレンジである。これまで,静的にとらえられていた粘膜上皮バリアを細胞骨格が関与する動的なものとして理解することは,粘膜バリアの機能に新たな概念をもたらし,感染制御への応用発展につながる点に意義がある。
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