2011 Fiscal Year Annual Research Report
黄色ブドウ球菌の病原性発現におけるフィブロネクチン結合因子の役割
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22590404
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
進士 ひとみ 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30287247)
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / FnBPA / FnBPB / 感染症 / 病原性 |
Research Abstract |
黄色ブドウ球菌が対数増殖期に発現するフィブロネクチン結合因子にはFnBPA,FnBPBの2つのホモログが存在する。この結合因子が宿主への感染に重要であることは多く報告されているが、FnBPAとFnBPBの機能的役割についてはまったくわかっていない。 本研究では、黄色ブドウ球菌株SH1000を親株としてFnBPA,FnBPBのシングルノックアウト株およびダブルノックアウト株を作成し、これらを用いて培養細胞および生体に感染させ、それぞれの因子の感染成立・病原性発現における役割について解析する。 本年度は、野生型であるSH1000株より作成したFnBPA(-)株、FnBPB(-)株、FnBPA(-)/FnBPB(-)株を用いて、BALB/cマウス(メス5週令)における感染実験を行った。5×107CFUの各株をマウス尾静脈から投与し、その後の体重変動および生残率を検討したところ、SH1000株投与では投与直後から体重が著減し、一週間以内に全頭死亡した。一方、FnBPA(-)株、FnBPB(-)株、FnBPA(-)/FnBPB(-)株投与群では、体重減少、死亡率ともに野生株に比べて低下した。これは、septic infectionにおいてFnBPが非常に重要であることを示すものである。FnBPA(-)株とFnBPB(-)株を比較すると、FnBPB(-)株投与群がFnBPA(-)株投与群より体重減少率、死亡率ともに高い結果となり、病原性発現にはFnBPAの関与がより大きいものと考えられる。更に、菌投与30分および24時間後の腎臓内菌数を測定したところ、FnBPA(-)株、FnBPB(-)株いずれの投与群においても野生株の1/3程度の定着数であり(FnBPA(-)/FnBPB(-)株では1/7)両変異株間に差は認められなかった。ところが24時間後の腎臓内菌数は、FnBPA(-)株およびFnBPA(-)/FnBPB(-)株投与群で野生株の1/300であったのに対し、FnBPB(-株投与群では野生株の1/17であった。この結果から、FnBPAはFnBPBに比べて生体内での増殖に重要であることが示され、上記の病原性の相違をよく説明するものと考えられる。昨年度の結果を考え合わせると、黄色ブドウ球菌感染の効果的成立には、FnBPA,FnBPB両因子が協調的に働くことが必要であるが、細胞内への侵入や血流に抵抗し得る強固な接着にはFnBPAが重要な役割を果たしている可能性が示唆される。引き続き、炎症の惹起ににおける両因子の作用について検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主たる所属機関の変更により、非常勤講師となったため、研究業務に割ける時間数は減少したが、講座のスタッフの協力も得て、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
病原性発現におけるFnBPA,FnBPBの概ねの機能は理解できたと思われる,次年度は生体内での炎症の強さがそれぞれの変異株でどのように変わってくるかについて、炎症性メディエーター産生や、NFk-Bの生体内での活性化などを測定することにより検討し、病原性発現におけるそれぞれの因子の定着・増殖能と炎症惹起能を検証する。
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