2011 Fiscal Year Annual Research Report
腸管上皮細胞に存在するボツリヌス毒素受容体タンパク質の同定
Project/Area Number |
22590405
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
渡部 俊弘 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (80175695)
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Keywords | ボツリヌス毒素複合体 / 小腸上皮細胞 / ボツリヌス食中毒 / 受容体 / 糖鎖 / シアル酸 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ボツリヌス毒素複合体が腸管から吸収される際、複合体中のどの分子あるいは領域が、小腸上皮細胞膜上のどのような分子に結合し、吸収されるかを明らかにすることにある。ボツリヌス毒素複合体は5つの構成成分、すなわち、神経毒素(BoNT)、非毒非血球凝集素(NTNHA)そして3種の血球凝集素(HA;HA-70、HA-33およびHA-17)から成るが、いずれの成分が細胞との結合に関わるかについては不明であった。平成23年度には、5種のタンパク質のうち、BoNT、NTNHA、HA-70およびHA-33が細胞との結合に関与することを見出した。特に5つのタンパク質の複合体(L-TC)の中ではHA-33が細胞との結合に関与していた。さらに、先にあげたタンパク質のうちの一部(BoNT、NTNHA、HA-33)について、細胞への結合に関わると考えられるドメインを組換えタンパク質として発現させ大量に得ることに成功した。すなわち、BoNTのC末端領域およびNTNHAの全体あるいはC末端領域そしてHA-33を大腸菌システムで大量発現した。本実験で得られたタンパク質を用いて毒素複合体に対する受容体を分離精製する。 また、本年度は、今まで知られていた細胞への結合様式とは異なる特異性を示す変異株が産生する毒素複合体を精製し、その細胞への結合に関わる細胞膜上の糖鎖構造の特定を行った。多くのCおよびD型毒素複合体はシアル酸を介して細胞へ結合する。しかし、変異株であるC型菌Yoichi株は、シアル酸には結合せず、ガラクトースを介して細胞へ結合することを見出した。この結果は、毒素複合体の構成成分の変異によって、認識する受容体に差異があることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究の目的である細胞膜上の受容体結合に関わるボツリヌス毒素構成タンパク質の同定に成功した。さらに、それらの大量発現システムを構築し、受容体分離に必要なタンパク質を安定かつ大量に調製することが可能となった。したがって、本年度の研究目的をおおむね達成しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫沈降により細胞膜上の受容体を分離する場合、細胞へ界面活性剤を加え、受容体タンパク質を抽出後、抽出物にリガンドおよび抗体を加える。しかしながら、界面活性剤の存在により、受容体とリガンドの結合効率が下がる場合がある。したがって、今後は、細胞へ直接、リガンドとなる毒素複合体構成成分を加え、クロスリンカーを用いて共有結合させた受容体-リガンド複合体を形成し、その後、界面活性剤による複合体の抽出を行い、受容体の分離同定を行う。さらに、微量タンパク質の同定を行うため、膜タンパク質のMS/MS解析の専門家(慶應義塾大学先端生命科学研究所増田豪研究員)との共同研究を進める。
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Research Products
(10 results)