Research Abstract |
βグルカン(BG)とマンナン(CAWS)は何れも真菌細胞壁の主要な構成成分であり,免疫系を刺激することから真菌由来のPAMPsとして知られる.真菌PAMPsの有用性は多くの研究者により積極的に解析されてきたが,有害性に着目した例は無い.我々はこの点に着目し,これらの活性はマウス系統差を示し,C57BL/6(B系統)はCAWSによる急性致死が起きるが,DBA/2(D系統)では強い血管炎を起こし慢性期に死亡することを見出した.本研究では,この2系統の差を解析するために、肝臓での遺伝子発現を中心に比較した。前年度にCAWS中心に系統差について検討し発現遺伝子の差を明確にしたので,本年度はSCGを中心に解析を進めた.遺伝子発現を網羅的に検討しpathway解析したところ,SCGに対する感受性の高いDBA/2系統では,apoptosisに関連した,Caspase1,3,4の発現がいずれも著しく高進した.さらに,TNFrsf6,Traf1,Apaf1,Badも上昇した.一方,C57B1/6系統では,TNF,Cradd,Cflar,Bid3,Casp12が高値を示し,著しい系統差を示した.これらのことから,CAWSならびにSCGのいずれのPAMPsに対しても両系統は著しい系統差を示すことが明らかとなった.さらに,我々はSCGはdectin-1の,CAWSはdectin-2のリガンドで有ることを明らかにしてきた.これらのC-type lectin受容体(CLR)の発現はGM-CSFによって発現制御されることから,GM-CSF遺伝子投与による高濃度発現系を構築したところ,CAWS感受性が著しく上昇した.これらのことから,真菌PAMPsはCLRを介して宿主免疫系の制御に密に関連していることが更に強く示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度には毒性発現に差のあるC57BL/6(B系統)とDBA/2(D系統)についてCAWSの作用を肝臓での遺伝子発現を中心に比較し,共通遺伝子ならびに各系統に特徴的に発現する遺伝子を見出した.本年は,それらを更に発展されるために,BGによる遺伝子発現との対比を含めて更に分子レベルでの解析を進めることを目的とした.上記の概要に示したとおり,βグルカン刺激での遺伝子発現を網羅的に解析することができ,さらに遺伝子導入を用いて感受性遺伝子を解析し,おおむね予定通りに研究を進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,肝臓の遺伝子発現を網羅的に解析してきた.我々は,マウスならびにヒトの末梢血白血球についても遺伝子発現を網羅的に解析をしており,両方の結果を相互に比較検討することで,研究は更に飛躍するものと考える.
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