2011 Fiscal Year Annual Research Report
サイトメガロウイルスの細胞指向性、個体での病態、防御抗体誘導に関する研究
Project/Area Number |
22590426
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
井上 直樹 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 室長 (90183186)
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Keywords | サイトメガロウイルス / アデノウイルス / モルモット / 中和抗体 / 感染防御 / 糖蛋白 |
Research Abstract |
モルモットサイトメガロウイルス(GPCMV)は、先天性CMV感染を小動物で唯一起こす。我々は、線維芽細胞での増殖に不要だが個体での増殖には必須な1.6kbのGPCMVゲノム領域を同定し、この領域が、細胞指向性に関与するヒトCMV UL128及びUL130蛋白に相同性を有する蛋白をコードすることを明らかにしてきた。本研究では、これらのGPCMVホモローグの解析を通して、UL128及びUL130について(1)細胞指向性決定の詳細な分子機序(2)個体での感染及び病態における役割(3)サブユニットワクチンの抗原候補としての可能性、を明らかにする。本年度の研究成果としては、妊娠モルモットにgBホモローグ発現組換えアデノウイルスを免疫することにより、85%程度の先天性感染の防御が確認された。しかし、一旦胎仔に感染が成立すると、gB抗体が胎仔に存在しているにも関わらず防御効果が無いことから、gB以外の蛋白に対する抗体が先天性感染の防御に重要であることが示唆された。同様の方法で、UL130ホモローグを発現する組換えアデノウイルスもしくはその感染細胞を用いて免疫した場合、中和抗体の上昇は見られなかった。このことより、gH,gLなどUL130と複合体を形成する他の蛋白がUL130の中和抗体誘導に必要な可能性があることがわかった。UL130ホモローグの全長をカバーする20残基のペプチドを用いて、抗原性の高いエピトープを同定した。また、モルモット内皮及び上皮細胞株の樹立を試みたが、長期培養に耐える株を得られていない、UL128-130ホモローグ領域に欠損がない蛍光蛋白発現組換えGPCMVを得たが、個体での増殖性が見られない、など想定外の問題が発生したため、現在、完全長の野生型GPCMVBACの構築を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体としては順調であるが、長期培養に耐えるモルモット内皮及び上皮細胞株が樹立できていないため、細胞指向性に関する検討が出来ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞指向性を検討する新たなアプローチとして、個体から得られた胎盤や脳などのスライスにGPCMVを感染させ、現在作製中のモルモット内皮を認識する抗体と抗GPCMV抗体を用いた組織染色を行う。また、BACの作製を行う。さらに、BACを早急に作製し、UL130など特定遺伝子をノックアウトした時の効果を明らかにする。その他の計画に変更はなし。
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