Research Abstract |
医療保険制度および介護保険制度の保険者機能については,これまで客観的な評価がほとんどなされていない.本研究の初年度は,実態調査により介護保険の保険者の機能,役割を明らかにすることを目的とした.全国1920の自治体より300の自治体を無作為抽出し,それぞれの介護保険担当課の総務担当者に対し郵送調査を行った.調査項目としては,保険者による審査・支払,保険者とサービス提供機関の協力関係の構築,保険者による被保険者・サービス提供機関に対する情報収集,保険者の自主的運営のための規制緩和等の措置の事項,それぞれへの対応状況,人権への配慮,ニーズの把握,幅広いニーズに応える多様な主体の参入促進,サービスの質の向上に対する取り組み,サービスの効率性の向上に対する取り組み,情報公開,住民参画などである.また,保健,医療,福祉に関する基礎統計資料についても同時に依頼した.65の保険者より回答を得た.介護保険者の保険者機能としては,給付の適正化(81,4%)をあげた保険者が最も多く,次いで,介護サービス提供機能(55.9%),介護予防サービス提供機能,地域ネットワーク支援機能(各々49.2%),事業の有効性,情報提供機能(各々47.5%),事業の効率性(45.8%),事業の公平性(44.1%),情報分析機能(37.3%),権利擁護の取組み,情報収集機能(各々32.2%),事業所支援機能(30.5%)があげられた.OECDが医療政策の基本的政策目標としてあげた,公平性,効率性,有効性,患者・被保険者の権限の拡大のうち,公平性にあたる給付の適正化のみを保険者機能としてあげた保険者が大半であり,患者・被保険者の権限の拡大に関しては,約3分の1の保険者が権利擁護の取組みを保険者機能としてあげていたものの,被保険者や利用者の権限の拡大をあげる保険者はほとんどない現状が明らかとなった.
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