2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会的弱者と若年集団との接触を考慮した都市部での結核対策に関する研究
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22590485
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
古屋 博行 東海大学, 医学部, 准教授 (10276793)
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Keywords | 結核 / 空気感染 / 室内二酸化炭素濃度 / 数学モデル |
Research Abstract |
1.換気指標としての室内二酸化炭素濃度の有効性の検討 大阪市保健所の協力により、これまで結核発症事例の接触調査69例について室内における二酸化炭素濃度を測定した。二酸化炭素濃度の平均値は862ppm、最大で2138ppmであった。室内換気基準1000ppmを超えるケースは、全体の21.7%であった。 2.室内二酸化炭素濃度からの換気回数と事業者側の換気回数との相関 事業者側から換気回数の情報が得られた9例について、室内二酸化炭素濃度からの換気回数との間でSpearmanの相関係数を求めたところ、ρ=0.57(p=1.04)と有意な相関でなかったが、今後例数を増やして検討を進める。 3.コンパートメントモデルによる結核感染のシミュレーション コンパートメントモデルは感受性のある者(S)、排菌(I)、回復(R)の3集団のコンパートメントを仮定した連立の微分方程式によるモデル(SIRモデル)である。このモデルは集団の構成員を同質とみなし,人口の時間変化に着目した微分方程式によるモデル作成が容易なことから、このモデルを使用して定性的傾向を把握した。前年度検討した室内の空気感染のWells-Rileyモデルと、今回のSIRモデルを融合したモデルを作成することで、室内換気が一般集団での結核罹患率に対し、どのように影響するか検討した。その結果、ハイリスク集団での結核罹患率の増加、接触時間が増加した場合に比べ、室内換気の影響は大きくないことが推測された。さらに詳細な検討を行うため、都市部での対象集団を、若年の一般集団とハイリスク集団とに分けて、それぞれの集団について、SIRモデルを現在作成、評価中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
室内二酸化炭素濃度測定器は携帯型であるものの、保健師の携帯にはやや負担があるため、測定実施数が想定より伸びていない。今年度、新たにより小型な二酸化炭素濃度測定器を購入し、来年度から使用予定である。また、感染モデルについては、若年の一般集団とハイリスク集団との接触に関する実データが少ないため、正確な感染リスクの推定に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、文献調査の範囲を広げ、若年の一般集団とハイリスク集団との接触率に関するデータを収集する。また、地域分子疫学調査結果から得られた集団感染のネットワーク事例を参考に接触率を推定したい。これらの情報を基に、小規模なモデルの作成に有利なマルチエージェントモデルを使用することで、より正確な感染リスクの推定を試みる予定である。
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