2010 Fiscal Year Annual Research Report
赤血球製剤の有効期間を6週間に戻すことの医学的、社会的意義
Project/Area Number |
22590486
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
田崎 哲典 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (80285626)
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Keywords | 輸血 / 感染症 / 血液製剤 / 輸血副作用 |
Research Abstract |
研究の主目的は、一般外来患者の血液中の細菌保有率、特に発熱や下痢などの有症状者の保有率を明らかにし、輸血用血液中の細菌混入率を推定し、赤血球製剤の有効期間が3週間である現在の基準を、当初の6週間保存に変更できないかを検討することにある。外来患者の細菌保有率は、検体確保の際の手技的な問題や検査容器の無菌性の保証の問題で、次年度に慎重に実施することとなり、先ずは(1)輸血副作用患者のバッグ内血の細菌の混入、(2)期限切れ廃棄となった血液の長期保存後の細菌増殖、(3)術中大量出血の患者でセルセーバーで回収した血液の汚染度、などを先に検討することにした。(1)は血小板製剤に比し赤血球製剤で発熱を呈する頻度は明らかに低く(赤血球:4/6,953、血小板:3/3,274)、細菌の検出はなかった。赤血球の保存温度(4~6℃)、保存前白血球除去(RCC-LR)、初流血除去などが理由と考えられた。なお研究期間において自己血輸血後の発熱例があり、中止した血液、及び未使用となった別のバッグから菌の検出はなかった。(2)は保存が9日から最大78日(平均44日、中央値51日、標準偏差17.5)までのRCC-LR計89バッグに対し、無菌的にバッグ内からサンプリングし、カルチャーボトルで好気性菌、偏性嫌気性菌の検出を試みたが、やはり菌は全く検出されなかった。その他、例数は少ないが期限切れとなった新鮮凍結血漿(5件、保管期間平均373日)、洗浄赤血球(5件、同15日)、血小板(5件、同9日)、自己血(13件、同51日)に対しても同様に試みたが、何れも陰性であった。(3)は術中に大量輸血を要した手術例など、術野から回収された血液を培養したが、やはり陰性であった。今回の検討では相当に長期に保管後でも、特殊な状況下で確保した血液でも菌の検出はなく、次年度に更にn数を増やし冒頭の点を踏まえて、赤血球の長期保存の意義をまとめる予定である。
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