2011 Fiscal Year Annual Research Report
赤血球製剤の有効期間を6週間に戻すことの医学的、社会的意義
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22590486
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
田崎 哲典 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (80285626)
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Keywords | 感染症 / 輸血 / 血液製剤 / 輸血副作用 |
Research Abstract |
本研究の最終目的は赤血球製剤の有効期限を現在の3週間から6週間に再延長することを可能にするために、その障害となっている血液汚染のリスクを正しく評価することにある。 研究初年は輸血用血液中の細菌混入はゼロに等しいことを示したが、今回はリスクが高いとされる有熱者や下痢など、感染症を伴う人での菌血率、菌種を把握することを目的とした。問題は患者と検体の選択で、大学病院受診の外来患者で純粋に発熱や下痢の精査を目的に受診される方は希であり、また何らかの合併症を有していることも多い。そこで検査に提出された検体を培養し、結果よりドナーの評価が可能かを検討することとした。 先ず、ランダムに100検体を対象に好気・嫌気ボトルに注入し観察したところ、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌(Pseudomonas paucimobilisなど)が13件、グラム陽性球菌(Staphylococcus epidermidis)が1件、検出された。何れも好気性菌で嫌気性菌は検出されなかった。これら陽性を呈した14件につき患者の病名を検索したところ、感染症に絡んだ病名は敗血症、中耳炎くらいで、他は腫瘍が4件、その他9件であった。この結果は患者が菌血の状態であったというより、採血管の無菌性や検査後の検体ゆえ、機器(プローブなど)を介してのcontaminationの問題と考えられ、危惧していた結果となった。日本赤十字社の無菌試験で輸血用血液の汚染は極めて稀であることが証明されており、ドナーが問診時、自己の状態を正直に申告し、血液センター側も諸種検査と併せて正しく評価すれば、このドナーの血液が患者に用いられることはほぼあり得ない。問題はそれが不十分であった場合でも、適切な白血球除去、厳格な保管管理等で汚染のリスクが極めて低いことが示されれば、社会的必要性と有効利用、救済制度の視点で、6週間保存への道が開ける可能性が出る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在、輸血用血液からの細菌の検出は極めて稀といえるが、有熱者や下痢など、感染症を伴う人はやはり献血のドナーとしては細菌汚染のリスクを高めると考えられる。そこで、外来患者の血液を対象に、菌血率、菌種の把握を目的に培養を試みた。しかし、用いた検体が検査後の血液であったため、培養によって高率に細菌が検出され、真のデータを出すことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本赤十字社の無菌試験では赤血球濃厚液における陽性率は(53/137,496;0.04%)で多くは皮膚の常在菌とのことであり(輸血情報0203-69)、通常の人由来の血液での汚染は極めて稀であることは証明されている。問題は問診や保管管理が不十分であった場合、汚染血液が患者に輸血される危険性であり、やはり下痢を含む感染症の人から無菌的操作で採血し、培養を行い、このようなドナーにおける菌血症の頻度、原因菌について正しく評価することは必須と思われ、この点を重点的に進めていく。
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