2011 Fiscal Year Annual Research Report
費用対効果の考慮、新薬の開発促進、ドラッグ・ラグの解消を可能にする薬価制度の検討
Project/Area Number |
22590489
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
白神 誠 日本大学, 薬学部, 教授 (00339243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野寺 祐加 日本大学, 薬学部, 助教 (60579861)
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Keywords | 薬価制度 / 新医薬品 / 新薬創出等加算 / 原価計算方式 / ドラッグ・ラグ |
Research Abstract |
本研究では、費用対効果を考慮し、かつ、薬価制度に期待されている医療費の適正化、画期的なあるいはアンメットメディカルニーズを満たす医薬品の開発促進、ドラッグ・ラグの解消といった様々な要素を包含した薬価制度のあり方を検討するための基礎となる研究を行い、それらの結果を基に新たな薬価制度を提案することを目的としている。研究方法としては、様々な制度案について仮に10年前からそれらがわが国に導入されていたとしたら、総医療費にどのような影響を与えたかをシミュレートすることにしている。今年度は予備シミュレーションとして、薬剤費に占める割合の大きい循環器官用薬を選び、2000~2008年について、新薬創出等加算が導入されていたと仮定して仮想薬価を算定した。さらに、解析対象とした医薬品について、仮想薬価を計算した後、販売量統計との積を求めることで、総販売額を計算した。その結果、仮想薬価から計算した総販売額は約97億円であり、同時期の実総販売額と比較すると、約20億円高かった。また、新たな薬価制度案を検討するため、管理会計の専門家に協力を求め、現行の原価計算方式の問題点と、今後のあり方の検討を行った。さらに、ドラッグ・ラグの原因の一つであるグローバル企業におけるわが国での開発着手の遅れの一つの要因としてわが国の薬価制度があるとの仮説を検証するため、最近日本で承認された新医薬品について、欧米での承認時期、承認後の売上高を調査し、仮に日本で同じ時期にその医薬品が承認されていたとしたら、どの程度の売上高が得られるかを推測した。ファイザー社のリリカ等6品目について検討したところ、わが国での仮想の売上高の伸びは、米国でのそれと比べると、発売後時間がたつほど大きく下回った。いち早く研究開発費を回収したいグローバル企業にとっては、わが国での開発が後回しになりドラッグ・ラグが生じることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
様々な制度案について総医療費にどのような影響を与えたかをシミュレートするためには個々の製品についての薬価の変遷に関するデータベースが必要だが、その構築に時間がかかったため、未だ予備シミュレーションにとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな薬価制度の総医療費絵の影響を見る上では、全医薬品を対象としなくても一部の分野(例えば循環器官用薬)を見れば傾向をつかむことができることがわかったので、今後は、他の研究者の協力も得つつ研究目的を達成する。
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