2011 Fiscal Year Annual Research Report
4離島における死生観教育の展開と展望を探る医学教育的研究
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22590494
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Research Institution | Okinawa Christian University |
Principal Investigator |
近藤 功行 沖縄キリスト教学院大学, 人文学部・大学院・異文化コミュニケーション学研究科, 教授 (70271426)
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Keywords | 死生観教育 / 医学教育 / 死生学 / 琉球文化圏 / 離島医療 / 生と死 / 与論島 / 伝統儀礼 |
Research Abstract |
地域医療を展開する上で、当該地域住民の死生観抽出が重要な側面を帯びる場合がある。とりわけ、琉球文化圏の離島においてはそこが顕著に出現していると筆者はみている。本研究では1986年8月から継続している筆者の与論島研究に照らし合わせ、今回、他離島3島を加えている。1島は訪島経験のない伊良部島である。初年度は田中國重・与論町教育長のご助力で与論中学校・町役場職員からアンケート実施がかなった。与論中学校では死者儀礼に関連した側面、自宅死亡・お墓をどう生徒らがとらえているのか、こうした側面を抽出し、全記載内容を入力した後にアンケート配付者全員(=欠席・未提出者含む)に結果を入力した報告資料を配付した。離島の中学校アンケートの実施では、教育長の理解は重要となる。与論島のように「ツテ」のない離島ではまず特養施設長を訪問、現地状況を聞き取り、教育長への橋渡しお願いを打診した。結果、粟国島・伊良部島ではこうした現地踏襲内容でもって、3中学校(=粟国島1校・伊良部島2校)への研究協力体制が整った(=実際のアンケートは研究最終年度で実施)。粟国島でも深刻な過疎化が進む中、1990年代にみられた「沖縄本島の病院で死亡後、遺体は必ず島に連れ戻す」行為は現在みられなくなった。島で亡くなった後、那覇市で火葬して再度島に戻すなど儀礼行為自体に変化が出た。与論島でも、昨年度の葬儀場設置からその利用者が増えてきている。2012年4月、1件の洗骨が与論島で実施。もう洗骨を残す墓地は数カ所のみ。粟国島・伊良部島とも、地域に展開する豊かな「生」の側面の民俗儀礼継承をつかみとった。離島に暮らす人々から、目に見えない死生観抽出作業を行い、「生」のある儀礼の中で医学教育に役立てられる視点が存在していることが2年目の研究からは見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年度、伊江島・伊江中学校(伊江村教育委員会)における生徒対象のアンケート依頼が受理されず、暗礁に乗り上げた。与論島と類似アンケート実施ではない説明をしたが心意が伝わらないままNG回答を得た。(1)設定地変更、(2)アンケートに頼らない手法で研究実行、(3)前記載2つを行う、で熟考中。アンケート部分は中学校に特化することが得策と考え、現在遂行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
地域の特性に応じた分析視点が抽出されつつある。1990年代に訪島経験がある粟国島はその時期との比較がかなった。研究成果報告書は各年度で限定部数刊行・配付し、調査でお世話になった方々に配付を図っている。なお、本研究の柱から出てくる枝葉的な内容も加味しつつ、最終年度の研究では本研究を通して多岐的な視点が得られる努力を図る。とりわけ、セレンディピティ的な新知見が得られるようなフィールドワークの遂行に力点を置く。
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Research Products
(4 results)