2010 Fiscal Year Annual Research Report
インスリンシグナルによる小胞体ストレス応答の修飾機構の解明
Project/Area Number |
22590553
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
稲毛田 清 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90281659)
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Keywords | インスリン / 小胞体ストレス / GRP78 / ATF4 / SH-SY5Y / 神経保護 / アポトーシス |
Research Abstract |
神経変性疾患発症に小胞体ストレス応答の関与が指摘されている。インスリンなどの細胞外刺激は神経細胞に対して保護的に作用するが、小胞体ストレス応答に対する効果についてはよくわかっていない。そこで、本研究ではインスリンシグナルによる小胞体ストレス応答の修飾機構を解明することを目的とする。本年度は、ヒト神経芽細胞腫であるSH-SY5Y細胞を用いて小胞体ストレス応答に対するインスリンの効果について検討した。小胞体ストレス剤処理によるcaspase-3の活性化は、インスリンにより濃度依存的に抑制された。一方、GRP78mRNAと蛋白質レベルはインスリンによってさらに増加した。小胞体ストレス剤によりmRNAレベルが上昇したGRP94、ATF4、GADD153については、インスリンによる影響はほとんど認められなかった。インスリンはATF4のmRNAレベルには影響しなかったが、その蛋白質レベルを増加させた。この増加は、PI-3 kinaseの阻害剤LY294002前処理により消失した。ATF4蛋白質はeIF2αのリン酸化を伴う翻訳レベルで調節されるが、インスリンはATF4蛋白質の翻訳効率とeIF2αのリン酸化に対して影響しなかった。しかし、GFP-ATF4融合蛋白質を発現させたところ、インスリンはその融合蛋白質の発現量を増加させた。インスリンはGRP78プロモーター活性を増加させ、この増加はATF4ノックダウンにより抑制された。SH-SY5Y細胞において、インスリンは小胞体ストレスによるcaspase-3の活性化を抑制した一方で、生存因子であるGRP78のmRNAと蛋白質レベルを増加させた。インスリンは、PI-3 kinase依存的にATF4蛋白質を安定化させて、GRP78誘導を調節することがわかった。
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