2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22590572
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
吉田 仁 大阪府立公衆衛生研究所, 衛生化学部, 研究員 (00332453)
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Keywords | 職業的曝露 / 生物学的指標 / シクロホスファミド / フルオロウラシル / 4-ケト-シクロホスファミド / アルファ-フルオロ-ベータ-アラニン |
Research Abstract |
医療従事者は職業上、日常的に抗悪性腫瘍剤を取り扱っている。近年、国内においても職業性抗悪性腫瘍剤の曝露による健康影響が危惧され、徐々に安全対策が進んできている。健康リスクを評価する、あるいは安全対策の効果を検証する際には、従事者の抗がん剤被曝量を明らかにする必要がある。本研究の目的は,日本の医療現場で多用されているシクロホスファミドおよびフルオロウラシルおよびに対する高感度で選択的な生物学的指標の測定方法を開発し,医療従事者の抗がん剤曝露状況を明らかにすることである. 平成22年度には,シクロホスファミドおよびフルオロウラシルの代謝物である4-ケト-シクロホスファミドおよびアルファ-フルオロ-ベータ-アラニン(AFBA)の分析方法を策定した.平成23年度は,国内の5病院において2008年から2011年に採取した抗悪性腫瘍剤を調製する薬剤師のべ26名の1日尿に含まれる4-ケト-シクロホスファミドおよびアルファ-フルオロ-ベータ-アラニン(AFBA)量を測定した.その結果,4-ケト-シクロホスファミドはいずれの尿検体からも検出されなかった.一方,AFBAについては,26名中13名の1日尿から検出された.26名の薬剤師の平均AFBA濃度は72ng/dayで,範囲は,検出下限値未満-554ng/dayであった.また,職場環境中フルオロウラシル濃度が高い病院の薬剤師の尿中AFBAが有意に高い結果となった.以上の結果より,AFBAは,フルオロウラシルの生物学的指標として有用であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4-ケト-シクロホスファミドについては,医療従事者から検出することができなかったが,アルファ-フルオロ-ベータ-アラニン(AFBA)については医療従事者から検出することができた.そして,薬剤師の尿中AFBA量と職場環境中フルオロウラシル濃度との相関性が示唆されたことから,AFBAの生物学的指標の有用性が評価できた.以上の理由より今研究はおおむね順調に進展していると考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力を得られた施設を対象に、職場環境中抗悪性腫瘍剤汚染および医療従事者の曝露に対するフォローアップ調査を実施する. すなわち,施設におけるこれまでの状態と種々の安全対策,たとえば安全設備,安全対策キット,個人保護具の充実、抗がん剤取り扱いに関するマニュアルや安全対策に関するチェックリストの整備と実践などを実施した後での職場環境中抗悪性腫瘍剤汚染および曝露状況の比較を行う.安全対策については,個々の対策を総合的に数値化するために,過去の研究で作成したチェックリストを用いる.医療現場における環境汚染指標および医療従事者の尿中シクロホスファミドおよびフルオロウラシル代謝物と安全対策の実施状況との関係を解析することにより,より客観的な安全対策の評価を行う.
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Research Products
(3 results)