2010 Fiscal Year Annual Research Report
薬毒物錯体混合物のタンデム質量分析によるカラムを使用しない高感度同時分析法
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22590631
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
南方 かよ子 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (70115509)
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Keywords | 質量分析 / シアン / 血液 / アジ化ナトリウム / 錯体化合物 / Au / 練炭中毒 / イオンスプレー |
Research Abstract |
血液中のシアン(CN)を錯体化合物とし、タンデム質量分析(MS-MS)を用いて分析する方法を開発した。 シアン中毒はCN化合物やある種の食品の摂取、燃焼により発生したCNガスの吸引等によりひきおこされる。今までの検出法では血液を酸性とすることによりCNをHCNガスとして分離したり、血液を除蛋白後に誘導体化して、GC-MSやLC-MS等、MS(質量分析)1回のみで検出していた。またそれらの方法では、血液を0.4-2mL使用し、分離と検出に40分を要していた。我々はより信頼性のあるMS-MSで、より少量の血液でより短時間に検出する方法を開発した。 血液5μLを採取し、50μLの水で溶血し、1 Mtetramethyl ammonium hydroxideを5μL添加混合し、pH10とする。10^<-4>MのNaAuCl_4を2μL添加し、methyl isobutyl ketone(MIBK)を75μL添加混合し、遠心する。MIBK層10μLをMS-MS装置ヘカラムを使用することなく直接注入し、m/z249のAu(CN)_2→m/z26のCNへの脱離反応をMS-MSで測定した。 血液中CNの定量範囲は10^<-7>-10^<-5>Mであり、4種類の中毒死解剖症例および正常人の血液中濃度は以下であった。1.練炭中毒者(n=6):(1.18±0.43)×10^<-7>M、2.家屋火災の焼死者(n=21)):(2.81±3.33)×10^<-5>M、3.NaCN中毒者(n=1):(1.17±0.04)×10^<-4>M、4.NaN_3中毒者(n=1):(3.02±0.21)×10^<-6>M、5.非喫煙正常人(n=6)):(2.74±0.93)×10^<-7>M。焼死者の内、2名のCNは正常人と同レベルであったが、COHb濃度は50%以上であった。また焼死者3名のCOHb濃度は20%以下であったが、CNは正常人の10倍レベルであった。NaN_3摂取者の血液中CNについては1989年以降5例において検討が行われ、3例では存在する、2例では存在しないと報告されている。本例では正常人の10倍レベルのCNの存在がMS-MSによりはじめて確認された。
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Research Products
(8 results)