2011 Fiscal Year Annual Research Report
薬毒物錯体混合物のタンデム質量分析によるカラムを使用しない高感度同時分析法
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22590631
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
南方 かよ子 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (70115509)
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Keywords | 質量分析 / アジ化ナトリウム / Au / 錯体化合物 / イオンスプレー / シアン / 胃内容 / 尿 |
Research Abstract |
アジ化物イオンの錯体化合物を生成し、タンデム質量分析(MS-MS)を用いて検出する方法を開発した。 アジ化物イオン(N_3)はエアバッグや防腐剤に使用されている。日本では近年その中毒や犯罪への使用が問題となり、1999年に毒物に指定された。N_3を誘導体とし、GC-MSによる検出が今まで最良の方法であった。しかし、その方法では誘導体化には30分、GCにさらに15分を要する点や、OCNはCNやSCNの酸化により生成するイオンであるが、N_3と同一質量であるため、N_3の判定を著しく妨害する点等、改良が必要であった。我々は試料をより少量とし測定を10分とし、OCNとN_3が区別できるMS-MSによるN_3の検出法を開発した。 試料をアスコルビン酸含有pH5の緩衝液に添加、Auイオンの錯体Au(N_3)_2を作成し、octanolで抽出し、ESI-MS-MS装置に注入する。m/z=281のAu(N_3)_2→m/z=253のAu(N)(N_3)のへの脱離反応をMS-MSで測定した。OCNはm/z=253にシグナルを示さないので、OCNとN_3とは明確に区別された。また、m/z=253における妨害イオンは非常に少なく検出感度は向上した。定量濃度は0.1-10μMであった。アジ化ナトリウム(NaN_3)による自殺と推定された解剖例での胃内容濃度は75mM,尿中濃度は3.2mMであった。胃内容中のNaN_3の総量は3.1gと計算された。本解剖例のように、高濃度の胃内容と尿では試料を20,000倍と5,000倍に希釈するのみで10分以内に検出できるので、本法は毒物スクリーニングに適した方法と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々の毒物を個別に検出する方法の開発は概ね終了した。アジ化ナトリウムの検出法についての論文は既に受理され印刷中である。同一カテゴリーの毒物を同時に検出する方法については一部のシリーズ(Cu,Ag,Au金属イオン類)についての論文は既に受理され印刷中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.陰イオン類(SCN,I,CIO4)の同時測定についてはデータをまとめている最中である。 2.プラチナ(Pt)を含む抗ガン剤の過剰投与によって死亡した解剖例の組織中のPtをAuと同時に測定することにより、Auを内部標準とした定量法を現在考案中である。またこの方法でCuイオンも同時に測定可能であることを見出している。 3.その他の薬毒物類についても同時定量法を考案する。
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Research Products
(8 results)