Research Abstract |
覚醒剤の中毒作用におよぼすストレスの影響をグルココルチコイドレセプター(GR)遺伝子多型(GR^8/GR^8, GR^8/ GR^<16>, GR^<16>/ GR^<16>)について比較検討した。今年度は覚醒剤単独群(M),ストレス群(S),覚醒剤+ストレス群(MS)の心筋に焦点をあてた。血中H-FABPレベルは,いずれの多型グループもMS/3hで有意に高値を示し,ストレス下では覚醒剤の心筋障害が強まることが分かった。遺伝子型で比較すると,正常値,S/6hではいずれの型もほぼ同じレベルであったが,M/ 3h, MS/ 3hではGR^<16>/GR^<16>が高値となる傾向を示した。次にホモタイプ(GR^<16>/ GR^<16>, GR^8/ GR^8)について心筋でのheat shock protein70(Hsp70)の遺伝子発現レベルを検討した結果,GR^8/GR^8,GR^<16>/GR^<16>ともにM/3hで高値を示した。またM,S,MS群でGR^<16>/ GR^<16>>GR^8/GR^8であり,MS/3hでは有意差(p<0.05)が認められた。心筋のHsp70タンパクレベルはGR^8/GR^8ではS/6hで,GR^<16>/ GR^<16>ではM/3hおよびS/6hで有意に増加した。遺伝子型で比較すると,一般にGR^<16>/ GR^<16>>GR^8/GR^8の傾向が得られ,M/3hではGR^<16>/GR^<16>がGR^8/GR^8に対して高値を示した(p<0.01)。Hsp90の遺伝子発現についても,M/3hで高い傾向が観察され,とくにGR^8/GR^8で促進が認められたが(p<0.05),多型間に有意差は認められなかった。HspsはGRの高次構造や機能に重要な役割をもち,その発現が個体での毒性発現程度に関与することを考えると,マウスGR遺伝子にみられる多型が,ストレス下における覚せい剤の心筋毒性に関与することが強く示唆された。
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