2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22590671
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
林 晴男 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (80569161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 孝和 九州大学, 医学系研究科, 准教授 (60291514)
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Keywords | 心因性発熱 / ストレス性高体温症 / 慢性疲労症候群 / 不明熱 / 心身症 |
Research Abstract |
平成23年度は、(1)心理的ストレス性高体温反応に交感神経活動の亢進、次いでβ3受容体を介した褐色脂肪組織の活性化という機序が関与するか、(2)心理的ストレスが褐色脂肪組織を活性化させる吻側延髄縫線核領域のプレモーターニューロンを活性化させるかどうかを検討した。 具体的には(1)体温を測定するための発信器を体内に埋め込んだウイスターラットを、ロングエバンスラットのケージに1時間(ロングエバンスラットから攻撃を受けたら、ついたてで仕切る)入れるという社会的敗北ストレスをウイスターラットに加えたところ、ウイスターラットの体温は約2℃上昇した。この体温上昇はジアゼパム4mg/kg、またSR59230A 5mg/kg(β3受容体アンタゴニスト)の腹腔内前投与によって有意に抑制された。(2)次に別のラットを用いて、社会的敗北ストレスを負荷したラットの脳を還流固定し、厚さ30μmの切片を作成。Fos(神経活動のマーカー)およびvesicular glutamate transporter 3(VGLUT3、褐色脂肪組織に投射する交感神経プレモーターニューロンのマーカーで、感染症による発熱時に活性化する)染色を行なった。ストレス群では淡蒼縫線核を中心とする延髄縫線核領域におけるVGLUT3陽性細胞の50-70%にFosが発現したが、diazepam処置群では10%前後と有意に少なかった。 これらのことから、ストレス性体温上昇反応には、感染症による発熱と同様、延髄縫線核領域の交感神経プレモーターニューロン-交感神経-β3受容体を介した褐色脂肪組織の活性化が重要な役割を演じることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
吻側延髄縫線核領域より上位の脳部位でのFos発現部位については、今回の報告書では言及していないが、すでに染色は完了しており、現在、解析中である。慢性ストレス負荷群での検討はまだ行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究でストレス性高体温反応には、感染症に伴う発熱反応と同様、吻側延髄縫線核領域交感神経プレモーターニューロン-交感神経-褐色脂肪組織での非ふるえ熱産生が重要であることを示した。今後は、(1)吻側延髄縫線核領域に投射する、より上位の脳部位の関与について検討を進めてゆくと同時に、(2)急性ストレス性高体温反応だけでなく、慢性ストレス状況による慢性高体温反応にも、この機序が関与するかどうかについて検討を進めてゆく。
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