2010 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性腸疾患における発癌調節機構の解明と臨床応用への基盤樹立
Project/Area Number |
22590696
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
長沼 誠 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 寄附講座教員 (00265810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永石 宇司 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (60447464)
渡辺 守 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10175127)
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 炎症性発癌 / 新規治療法 / 粘膜免疫 / MLCK |
Research Abstract |
本研究は申請者らが独自に研究を展開してきた腫瘍壊死因子(TNF)受容体シグナルを介した腸管上皮細胞における免疫学的シグナル伝達に注目し、炎症性腸疾患における特異的発癌分子機構とその新規治療標的としての可能性について着目している。その結果、本研究では当該研究期間に以下のような成果が得られた。1)マウス腸上皮細胞株MODE-KおよびCT-26細胞を用いた実験では、1型TNF受容体(TNFR1)および2型TNF受容体(TNFR2)がそれぞれこれらの細胞に発現していることがmRNAおよび蛋白質レベルで確認された。2)またリコンビナント(r)インターフェロン-ガンマ(r IFN-γ)の存在下でこれらの細胞を培養すると、TNFR1の発現には変化がみられないものの、TNFR2の発現は増加することがWestern blot法で観察された。3)またr IFN-γやr TNF-αの存在下で培養したこれらの細胞において、コントロールと比較してp65やIκ-Bαのリン酸化が誘導されることが生化学的に確認された。これを受けて現在、腸管上皮細胞のアポトーシスに対するTNFシグナルの影響を解析中である。これらの研究結果は腸管上皮細胞における特異的なTNFシグナルがNF-κBの活性化に深く関与する事実と、それによる腸管上皮細胞の発癌を誘導し得る可能性を暗示するものと思われる。さらにこの分子メカニズムが炎症性腸疾患における特異的発癌の病態機序においてその治療標的になりうることが示唆され、今後の研究成果が期待されるものと思われる。
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