Research Abstract |
骨髄間葉系幹細胞(MSC)は再生医療や遺伝子治療のソースとして期待される一方で,腫瘍に対する影響は明らかではない 本研究では,VEGF低発現の大腸癌細胞株とMSCの混合移植腫瘍(xenograft)を用いて,大腸癌におけるMSCの動態と役割を検討した,MSCは腫瘍間質内のperivascular nicheに局在し,各種分化マーカーの発現様式を検討したところ,MSCは血管周皮細胞へ分化し,腫瘍血管新生に寄与するものと考えられた.また,腫瘍CXCL12(SDF-1)産生を亢進させ,自らが発現する受容体CXCR4により腫瘍組織内に保持されるのみならず,腫瘍細胞におけるAkt,p38のリン酸化を誘導し,腫瘍生存シグナルを活性化させ,腫瘍生着および生存に寄与することを明らかにした.DNAマイクロアレイによるMSC混合/非混合移植腫瘍の遺伝子発現変化を網羅的に検索したところ,CXCL12 mRNA発現が約20倍増強していた.また,MSCは,液性因子ではなく,直接腫瘍細胞に接触することで腫瘍SDF-1産生を亢進させることが明らかとなった.大腸癌細胞株では,CXCL12遺伝子のプロモーターのCpGアイランドがメチル化により不活化されているとの報告もあり,現在CXCL12発現誘導のメカニズムに関し,更なる検討を加えている.興味深いことに,AOM/DSSによる炎症発癌モデルにおける検討では,MSCは,発癌のイニシエーションを抑制する傾向を認めており,より生理的条件下におけるMSCの腫瘍細胞に対する相互作用を検討する予定である 以上の成果は,今後MSC治療を臨床応用する際,発癌性に関する基礎データを提供するのみならず,腫瘍とその微小環境の相互作用を解明する一助として意義がある
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