Research Abstract |
骨髄間葉系幹細胞(MSC)は再生医療や遺伝子治療のソースとして期待される一方で,腫瘍に対する影響は明らかではない. 昨年度は,VEGF低発現の大腸癌細胞株(COLO320)とMSCの混合移植腫瘍(xenograft)を用いて,大腸癌におけるMSCの動態と役割を検討した.MSCは腫瘍間質内のperivascular nicheに局在し,血管周皮細胞へ分化して,腫瘍血管新生に寄与するものと考えられた.また,腫瘍CXCL12(SDF-1)産生を亢進させ,自らが発現する受容体CXCR4により腫瘍組織内に保持されるのみならず,腫瘍細胞におけるAkt,p38のリン酸化を誘導し,腫瘍生存シグナルを活性化させ,腫瘍生着および生存に寄与することを明らかにした. 本年度は,大腸癌においてCXCL12はプロモーターのメチル化により不活化されるにもかかわらず,CXLO320は,何らかの機構でエピジェネティクな不活化から逃れCXCL12を高発現していた.そこで,activation-induced cytidine deaminase (AID)が(1)メチル化シトシンを基質としてチミンへ転換するいわばDNA脱メチル化酵素として作用する,(2)AIDはxenograftに対するmutatorである,との2つの仮説を立て検証した.その結果(1)は否定され,(2)の可能性が想定された.MSCは,VEGF低発現の大腸癌に対して血管新生を介して腫瘍の生着を促進し,CXCL12/CXCR4 axisを介して増殖を促した.但し,AIDはこの系において脱メチル化酵素として作用せず,CXCL12発現調節に関してTET1-3が新規脱メチル化酵素として有力な候補と考えられた. 以上の成果は,今後MSC治療を臨床応用する際,発癌性に関する基礎データを提供し,発癌リスクを有する炎症性腸疾患(IBD)患者に対する新規MSC治療の臨床応用に向けて,重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Xenograftを用いた検討ではMSCは腫瘍間質内のperivascular nicheに局在し,血管周皮細胞へ分化して,腫瘍血管新生に寄与した.一方,AIDはこの系において脱メチル化酵素として作用せず,CXCL12発現調節に関してTET1-3が新規脱メチル化酵素として有力な候補と考えられ新知見を見出した.
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