2011 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化炭素による腸管炎症制御・粘膜損傷治癒効果の分子機構解明
Project/Area Number |
22590706
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
高木 智久 京都府立医科大学, 医学研究科, 講師 (70405257)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 裕二 京都府立医科大学, 医学研究科, 准教授 (00305575)
半田 修 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (90381970)
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Keywords | 一酸化炭素 / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 / 炎症性腸疾患 / 抗炎症作用 / 粘膜治癒 |
Research Abstract |
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の病態制御を目指した新規治療法の開発を目的として、本研究課題を遂行した。本研究課題の施行初年度に、安全なCarbon monoxide(CO)投与法の開拓を行い、CO溶解液を作製することに成功した。50%COを閉鎖されたガラスバイアル内の50ml生理食塩水にバブリングすることでCO飽和溶解液を作成し、CO溶解液とした。本溶解液をラットに対して経肛門的に1ml投与(注腸投与)を施行し、経時的にCO血中濃度を測定したが、投与12時間後までにCO血中濃度の上昇を認めず、CO中毒を惹起しない安全性が担保された投与法であることが確認された。 本年度の検討では、クローン病類似モデルとしてラットTrinitrobenzesulfonic acid(TNBS)腸炎モデルを作成し、CO溶解液を用いて抗炎症(腸炎抑制)効果を検証したところ、ラットTNBS腸炎の発症が抑制されることが明らかとなった。さらに、大腸病変がピークを迎えるTNBS腸炎惹起後2日目よりCO溶解液を注腸投与することにより、腸管炎症の治癒が有意に促進されることが明らかとなった。その機序として、CO溶解液注腸投与群では大腸潰瘍部の再上皮化が促進していることに着目し、CO溶解培養液を作成し、ラット正常腸上皮細胞株を用いてwound healing assayを施行した。その結果、CO溶解培養液によって有意にwound healingが促進されることが明らかとなった。これらの結果から、CO溶解液の注腸投与により良好な腸炎抑制効果、ならびに、腸炎治癒促進効果がもたらされることが示された。次年度に、COによる腸管上皮細胞の治癒促進効果に係わる分子機構の詳細を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学窒息性の毒性ガスである一酸化炭素を腸管炎症制御を目指した新規治療分子として用いるために、一酸化炭素飽和溶解液の作成を行い、注腸投与することにより高い安全性が担保できることを明らかした。さらに、腸管炎症進展抑制・腸管炎症治癒促進効果をもたらすことを証明することができている。また、一酸化炭素溶解培養液を用いた検討において、正常腸管上皮細胞の遊走能を亢進させ、上皮の治癒促進効果がもたらされることも明らかにすることが出来た。本現象の詳細な分子機構の解明には、さらなる時間を要するものの本年度の検討項目としておおむね順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、今後、炎症性腸疾患における重要な病態の一つである腸管線維化についての検討を推進する予定である。CO溶解液によりラット線維化モデルにおいて過剰な線維化の進展が抑制されることを明らかにするとともに、単離腸管筋線維芽細胞におけるCOの有効性を検討していく。これらの計画の遂行により炎症性腸疾患治療において、COの新規治療分子としての可能性の検証を推進していく予定である。
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Research Products
(5 results)