2011 Fiscal Year Annual Research Report
損傷消化管粘膜上皮における塩基性アミノ酸ヒスチジンの機能性研究
Project/Area Number |
22590710
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
市川 寛 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60336732)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南山 幸子 京都府立大学, 生命環境学部, 教授 (00362989)
|
Keywords | ヒスチジン / 小腸粘膜 / 創傷治癒 |
Research Abstract |
生体内におけるヒスチジン欠乏状態は、透析を必要とするような糖尿病腎症などの病態を悪化させるのみならず、褥瘡などの創傷治癒の遅延や、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)起因性消化管粘膜傷害の原因ともなりうる。すでに我々は予備的検討において、粘膜上皮の創傷修復機序における各種アミノ酸の機能性を検討したところ、塩基性アミノ酸の一種であるヒスチジンが欠乏した状態では修復機序に影響を及ぼすことを見いだしている。本研究は,粘膜上皮修復機序におけるヒスチジンの機能性を明らかにし、ヒスチジンを標的とした栄養療法を確立させ,今後激増すると思われる慢性腎臓病患者のNSAIDによる消化管合併症予防のための基礎データを収集することを目的としている。 昨年度に引き続き本年度は、ラット小腸上皮細胞による円形上皮欠損モデルを用いて、各種アミノ酸を個別で欠落させた培養液を用い、修復速度の違いを検討したところ、ヒスチジンが欠乏した状態において、小腸粘膜上皮の修復過程に著しい障害をきたすことを見いだした。かつその原因として、ヒスチジン単独欠乏による細胞増殖の抑制、熱ショック蛋白の誘導、アポトーシス、増殖因子の関与などが示唆された。 以上のことは、粘膜上皮修復機序において、必須アミノ酸であるヒスチジンが重要な役割をしていることを示しており、病的状態におけるヒスチジン欠乏が、消化管粘膜障害を増悪させる可能性を示唆している。同時に、消化管合併症の予防にヒスチジンなどの栄養学的アプローチが重要な役割を果たすことを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
創傷治癒における損傷部位への細胞遊走、細胞増殖、アポトーシスに対する、必須アミノ酸ヒスチジンの重要性については、その機序も含めてほぼ明らかになっているが、ヒスチジン欠乏下におけるヒスタミンやカルシンとの関連や、他のアミノ酸との相互作用についての詳細な研究が今後の課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒスチジン欠落時の創傷治癒遅延の機序を、より詳細に明らかにするとともに、ヒスチジンが前駆体となるヒスタミンやカルノシンとの相互作用を中心に,創傷治癒におけるヒスチジンの重要性を証明する。また、ラット小腸上皮細胞に様々なストレスを与えたときの創傷治癒におけるヒスチジンの役割を明らかにする予定である。
|
Research Products
(6 results)