2011 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄系血管・免疫前駆細胞を標的とした新規肝癌治療法の開発
Project/Area Number |
22590729
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
考藤 達哉 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (80372613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹原 徹郎 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70335355)
平松 直樹 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30362700)
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Keywords | 肝癌 / 血管新生 / TIE2 |
Research Abstract |
C型肝硬変からの発癌、治療後の再発や転移には、腫瘍血管の新生や免疫抑制細胞の増加が関与している。肝癌患者の予後を改善するためには、肝癌の再発予防が重要である。本研究では肝癌による血管新生と免疫抑制に関与する骨髄系前駆細胞に着目し、その血液中、組織中での動態と癌部での分化誘導過程を解明することを目的としている。前駆細胞の血液から肝臓への遊走や血管内皮、免疫抑制細胞への分化に関与する分子を同定し、それを標的とする肝癌に対する新規治療法の確立を目指す。TIE2陽性単球(TEM)は、血管新生因子Angiopoietinの受容体(TIE2)を発現し、癌における血管新生への関与が報告されている。昨年度までに、肝癌患者では末梢血中、肝癌組織中でTEMが増加していること、手術やRFAなどでTEM頻度が低下すること、末梢血TEM頻度は肝癌の診断マーカーとして有用であることを報告した。今年度は、1)TEMの肝癌組織での局在、2)TEMと肝癌組織における血管新生との関連性、3)TEM頻度と肝癌治療後の再発、予後との関連性などを明らかにすることを目的とした。免疫蛍光組織染色にてTEMは肝癌周辺部に同定され、血管壁細胞近傍に特に集積していた。また血管新生をCD34陽性細胞密度(MVD)で評価すると、末梢血TEM頻度、肝癌組織中TEM頻度は、MVDと有意に正相関を認めた。治療前のTEM頻度を中央値でカテゴリー化すると、肝癌患者のTEM高値群は低値群に比較して、治療後の無再発期間は有意に短かった。またTEM高値群は低値群に比べて、Child B群が多く、肝予備能(血清Alb値、PT値)が有意に低かった。以上の結果より、TEMは肝癌における血管新生に関与しており、TEMの解析は治療後再発、予後の予測マーカーとしても有用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度、今年度の研究によって、1)肝癌患者では末梢血、肝癌組織においてTIE2陽性単球(TEM)が増加していること、2)TEM頻度は肝癌組織の血管新生の程度と相関していること、3)TEM頻度は、肝癌の診断、治療後再発、予後のマーカーとして有用であることを明らかにした。以上は、肝癌の病態の理解や、TEMの臨床応用へ向けて重要な知見であり、研究は当初の予定通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究から、TEMの増加が肝癌の進展や再発に関与することが明らかになった。次年度は、肝癌患者においてTEMが増加する機序、TIE2が誘導される機序を解明することを目標とする。現在までに、我々は炎症性サイトカイン、造血因子が単球でのTIE2誘導効果を持つことを実験的に確認しており、今後はその分子機序の解明を目指す。それによって、TEMの制御を介した肝癌治療の実現を目指したい。
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