2011 Fiscal Year Annual Research Report
HNF3β発現誘導性低分子化合物同定による肝再生医療開発
Project/Area Number |
22590732
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
星川 淑子 鳥取大学, 医学系研究科, 助教 (10181489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
汐田 剛史 鳥取大学, 医学系研究科, 教授 (70263457)
栗政 明弘 鳥取大学, 医学系研究科, 准教授 (80343276)
神吉 けい太 鳥取大学, 医学系研究科, 助教 (10516876)
松本 則子 鳥取大学, 医学系研究科, 研究員 (70457167)
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Keywords | 肝臓 / 再生医療 |
Research Abstract |
平成22年度に、200種類の天然低分子化合物からなる低分子化合物ライブラリーについてHNF3β発現誘導性化合物を探索した。5種類の化合物を候補として選出したが、その誘導活性は低く、間葉系幹細胞から機能性肝細胞への分化誘導には不十分であると判断した。平成23年度は、ヒトおよびマウスES細胞において内胚葉への分化を誘導し、その結果HNF 3β発現を強く誘導することが報告されている低分子化合物、IDE1およびIDE2(Borowiak et al, Cell Stem Cell, 2009)に着目した。IDE1およびIDE2は、アクチビン受容体であるALK4を介するシグナルを活性化することによりHNF 3βを含む内胚葉特異的遺伝子の発現を誘導することが報告されているが、ヒト間葉系幹細胞に対する作用については未だ明らかにされていない。そこで、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株UE7T-13について、ALK4活性化により引き起こされるシグナル分子、Smad2のリン酸化を指標として、IDE1と既知化合物との併用によるアクチビンシグナル活性化について検討した。IDE1の細胞毒性について検討したところ30μMまで生存率および増殖に影響を与えないことが判明した。次いで、IDE1処理によるアクチビンシグナル活性化を検討するために以下の実験を行った。UE7T-13細胞を播種し10%牛胎仔血清を添加したDMEMを用いて24時間前培養した。その後、Wnt/β-cateninシグナル抑制性低分子化合物の一つである、hexachloropheneを含む低血清濃度のRPMI1640倍地にて24~72時間培養した。培地を交換後、24,48,72時間にIDE1にて1時間の処理を行いウェスタンブロットによりSmad2のリン酸化について検討した。この結果、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞においても、IDE1処理によりSmad2のリン酸化が引き起こされることが示された。平成23年度に得られた結果は、ヒトES細胞のみならずヒト間葉系幹細胞においても低分子化合物によるアクチビンシグナル活性化が可能であること、さらにアクチビンシグナルにより制御されることが知られているHNF 3βを含む内胚葉特異的遺伝子の発現を誘導できる可能性があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IDE1と既知化合物の併用によりアクチビンシグナルを活性化することが可能であることを明らかにした。これにより平成23年度の交付申請書に記載した研究目的はほぼ達成した。しかし、HNF 3β発現誘導の確認および肝芽細胞様細胞への分化誘導系の確立は平成24年度の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題採択時の研究目的は、低分子化合物を用いた分化誘導により得られた機能性肝細胞を用いて細胞シートを作製し、肝障害マウスへの移植により有効性を検討することであった。しかし、達成状況を鑑みて平成24年度は、(1)間葉系幹細胞を肝芽細胞様細胞に分化させた後に安定増殖を可能とする培養法および保存法の確立、(2)大量培養した肝芽細胞様細胞から成熟肝細胞への分化誘導系の確立、(3)(1)および(2)により得られた分化段階の異なる細胞より作製した細胞シートの性状解析を行い、肝再生医療に適した移植用細胞シートを得るための基礎的検討を行うことを目標として研究計画を遂行する予定である。ヒト間葉系幹細胞は肝再生医療の細胞源として極めて有用であるが、新鮮骨髄由来間葉系幹細胞の安定増殖は未だ達成されておらず、移植用細胞の大量調製は肝再生医療実現のために克服すべき重要な課題である。研究計画を変更し、細胞シートによる移植実験の準備段階として、間葉系幹細胞から移植用成熟肝細胞を十分量確保するための方法を確立することを本研究課題の目標とする。
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Research Products
(12 results)