2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病合併冠動脈疾患患者における、心拍低下療法の妥当性を問う観察研究
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22590788
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
井上 卓 琉球大学, 医学部附属病院, 特命助教 (00537102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 真一郎 琉球大学, 医学研究科, 教授 (80285105)
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Keywords | 心拍数 / 交感神経 / 冠動脈疾患 / 糖尿病 / 予後 |
Research Abstract |
心拍数の増加が予後の独立した危険因子であることは、多くのコホート研究およびβ遮断薬を用いた介入研究の結果により示されている。近年欧米で行われたIvabradineによるRCTの結果は、心拍低下療法が心臓血管疾患イベントを抑制することを示した。様々なエビデンスにもかかわらず、現実の臨床現場における心拍数管理への認識は低い。日本循環器学会心筋梗塞二次予防に関するガイドライン2006においては、β遮断薬を用いた心拍低下療法は、急性期及び陳旧性の心筋梗塞症例に対しては、Class IエビデンスレベルAとする一方で、低リスク群に対しては未だ議論の余地が残ると判断されており、本邦において、これら対象者における心拍低下治療のエビデンスの集積が求められている。これらを背景として、本研究は"糖尿病合併冠動脈疾患患者におけるイベント発症リスクは、達成・維持できた心拍数が低いほど低い"という仮説を証明すべく計画された、多施設共同の前向きコホート研究である。 冠動脈造影実施患者から、糖尿病合併冠動脈疾患患者を同定してデータベースを作成した後に、6ヶ月おきに必要なデータおよびイベント(総死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合)の有無を追跡した。過去のエビデンスおよび事前の調査結果より、85bpmを心拍数のカットオフ値として用い、心拍数と追跡期間におけるイベント発症の関連を、カプランマイヤー法およびCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 平成23年度までに3404症例が登録され、追跡情報が収集され評価可能な922症例(男性65%、年齢67.5±10.3歳)を対象として中間解析を行った。平均追跡期間3.0±1.7年に、複合イベントが151(16.4%)件(全死亡100(10.8%)、非致死性心筋梗塞24(2.6%)、非致死性脳卒中43(4.7%))認められた。追跡期間の平均心拍数が85bpm未満の対象者に対する85bpm以上の対象者のイベント発症の補正ハザード比は、0.62(95%CI O.41-0.96,p=0.034)であり、心拍数の低下はイベント発症に対して抑制的に作用することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
症例の登録数は当初の目標を下回っているが、統計解析に耐えうる数を確保している。追跡情報が収集され評価可能な症例は全体の3分の1程度であるが、中間解析を行った結果、当初予想された結果が示されている。今後追跡情報の収集が順調に行くことで、当初の研究計画をほぼ達成できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究結果をもとに、高リスク安定冠動脈疾患患者に対する、β遮断薬を用いた心拍低下療法のランダム化比較研究の展開につながる。これは、高リスク安定冠動脈疾患患者に対する、薬物療法の新たなエビデンスとなりうる。
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