2011 Fiscal Year Annual Research Report
各種薬剤溶出性ステント術後の傷害血管修復機転に関する研究
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22590794
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
井上 晃男 獨協医科大学, 医学部, 教授 (20168454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 七郎 獨協医科大学, 医学部, 教授 (80275718)
田口 功 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (80316570)
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Keywords | 臨床心血管病態学 / 分子血管病態学 |
Research Abstract |
平成23年度は第二世代のDESであるゾタロリムス溶出性ステント(ZES)、エベロリムス溶出性ステント(EES)とベアメタルステント(BMS)の3者間で傷害血管の修復機転を比較した。植え込み1週間でピークとなる骨髄由来幹細胞(CD34+cell)および血管内皮前駆細胞(EPC:CD34+/CD133+/CD45^<low>cell)の末梢血への動員をフローサイトメトリーで評価した。ステント留置25症例(ZES:9例、EES:7例、BMS:9例)において留置前、1週間後の末梢血CD34+cell数およびEPC数の測定を行った。その結果、CD34+cell数およびEPC数とも植え込み前に比べ1週間後BMS例では増加、EESではやや増加、ZESでは減少した。特にEPC数の変化率はBMS:74%,ZES:19%,EES:-10%であった。ステント植え込み後の傷害血管の修復に必須の機転である再内皮化内皮細胞が一部骨髄由来EPCの分化によるものであることから、これらの結果はZESよりもEESのほうがより生理的に血管修復される可能性があることが示唆された。また遠隔期のステント留置部位の血管修復状況を光干渉断層法(OCT)画像上ステント表面の新生内膜の被覆度で評価した。現在9症例12病変で解析が終了しており、ステントごとの%非内膜被覆率(非被覆ストラット数/全ストラット数)がDES:0.55%、BMS:0.32%とDESで大であったことからDESにおける遠隔期の血管修復の遅延が示唆された。さらにステント留置遠隔期に再狭窄のなかったDES:53例およびBMS:50例で比較すると、DES群でIL-6(p=0.003)およびIL-8(p=0.015)が高値であった。これらの結果からDESの場合留置後急性期には炎症反応は抑制されるが、遠隔期になると血管修復の遅延のため炎症が再燃し遷延化する可能性が考えられた。平成24年度はさらに症例を重ねて検討を続けるとともに、一部の症例では遠隔期の再内皮化を血管内視鏡での評価も行う。さらにヒト末梢血単核細胞から血管内皮細胞への分化に対するゾタロリムスおよびエベロリムスの影響を検討するin-vitroの実験も進め、薬剤溶出性ステント術後の傷害血管修復機転に関する我々の仮説を基礎的・臨床的に検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験系の確立に時間を要したこと、臨床研究においては研究に適した症例が少ないことや患者の同意が得にくいこと、遠隔期までのフォローアップまでに脱落する症例があることなど、またin-vitroの実験においてはエベロリムス・ゾタロリムスの実験用原末の入手の遅延などがその原因と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
対象症例数は着実に増えており、本年度で結果が出せるだけの数が集まる見込みである。患者同意を得るために、時間をかけて誠意ある説明を行うこととする。対象例に対し急性期EPCの経時的測定と遠隔期OCT、一部血管内視鏡を行う。急性期、遠隔期の保存血清で、炎症・酸化ストレスマーカーの測定を行う。データ収集に際してはこれを迅速に行い、すみやかに解析する。in-vitroの実験においてはヒト末梢血単核細胞から血管内皮細胞への分化と同時に培養血管内皮細胞(冠動脈内皮細胞)を用いた検討も行う。
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