2011 Fiscal Year Annual Research Report
冠動脈粥腫破綻機序を解明するための三次元破壊力学手法による独創的解析と治療法開発
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22590798
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
廣 高史 日本大学, 医学部, 准教授 (10294638)
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Keywords | 動脈硬化 / プラーク / 急性冠症候群 / 血管内イメージング / 冠動脈 / プラーク破綻 / 材料力学 |
Research Abstract |
H23年度はH22年度に収集した実際に破綻した粥腫ならびに易破綻性と思われる粥腫の力学的構造や組織性状の実データに基づき、プラーク破綻の力学的メカニズムの解析を3D画像構築ソフト、流体力学シミュレーションソフト、超高速度撮影(1200コマ/秒)などの各手法を用いて行った。まず3D画像解析ソフトにより、プラーク破綻を呈した99例の患者の血管内エコー像から輪郭抽出を行い、プラーク破綻像の3D構築を行った(1例の所要時間5-6時間)。その結果、プラークの破綻は決して単純なものではなく、shoulder type, middle type, slit type, residual fibrous cap type, fibrous cap bridge type, tunnel type, rupture in rupture typeなど多岐にわたって分類されることが判明した。そして、急性冠症候群発症の有無はプラークの破綻様式によりある程度決定されることも判明した。次に流体力学ソフトを用いて、プラークの破綻から急性冠症候群を発症するために必要な閉塞性血栓の形成様式について種々のシミュレーションを行った。またプラークアナログを用いた超高速度撮影より、プラークの破綻は必ずしもプラーク表面の線維性被膜から始まるわけではなく、voidと呼ばれるプラーク内空泡から始まりうることがわかった。以上より、プラークの破綻の過程が部分的にではあるが、徐々に明らかになり、またその方向性は決して単一でないことが判明した。プラークの破綻様式の3D的な多様性について示した報告は今まで例になく、プラーク破綻機序の全容解明と、予防処置の発見的研究に向けて大きな意義を有する成果がえられた。その方向性の中で、次期H24年度は本研究結果を統合して結論を得ていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究遂行にあたって最も重要な臨床データとして、100例近いプラーク破綻のデータ(1つのデータ獲得に約5-6時間要する)がほぼ順調に集積され、そのデータから急性冠症候群の発症がプラーク破綻の様式からどのように規定されているかを統計的に探索することが可能な例数となった。さらに、各例について数十項目の臨床的プロファイルも収集できた。その結果、プラーク破綻の様式の臨床的規定因子も検索可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、急性冠症候群の発症様式を決定するプラーク破綻の様式は何か、そしてさらにプラーク破綻の態様を規定する臨床的背景は何かを検索し、本研究を統合する方向に推進していく。そのため、流体力学、統計学、破壊力学的な種々の分析について3D的にアプローチする最先端手法を取り入れていく。その中で特に問題となるのは、3D情報の定量化である。これには独自の数学的定量化手法を発見していく必要がある、
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