2011 Fiscal Year Annual Research Report
PAI-1の冠動脈微小血管保護作用の解明と心筋梗塞の新規治療への応用
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22590819
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金子 壮朗 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (90455634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
筒井 裕之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70264017)
石森 直樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (70399848)
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Keywords | 循環器 / 分子生物学 / 動脈硬化 / 心筋梗塞 / 心破裂 / 凝固線溶系 / 炎症細胞浸潤 / 心筋リモデリング |
Research Abstract |
1)PAI-1は心筋梗塞領域の血管壁を保護し、血管内皮細胞と基底膜の接着を安定化させ、心筋梗塞後の心筋間質への出血や炎症細胞浸潤を抑制することで心破裂を抑制し、梗塞後の心筋リモデリングを抑制することが以下の研究成果で明らかとなる。 ●PAI-1TGマウスと正常マウスに心筋梗塞モデルを作成すると、梗塞後の心破裂率はPAI-1TGマウスで有意に低下した。心エコー検査の結果からPAI-1TGマウスでは左室リモデリングが抑制され、梗塞28日後の心機能は正常マウスと比較し温存されていることが分った。心筋梗塞領域の組織像は正常マウスと比較しPAI-1TGマウスでは組織内の出血は軽度であり、炎症細胞浸潤はどの時相も軽度であった。一方、PAI-1KOマウスでは正常マウスと比較し梗塞後の心破裂率は著しく高率となり、心筋梗塞領域に著しい出血像と顕著な炎症細胞浸潤を伴っていた。 2)心筋梗塞後の血管破綻、心破裂抑制のメカニズムとしてuPA活性亢進によるplasminogen-plasmin systemの活性化の結果生じるMMP(MMP-9,MMP-2)の活性亢進が細胞外マトリクスを分解することにより、冠動脈微小血管壁の基底膜を分解し心破裂を起こし易くしていることが以下の研究成果から示唆された。 ●PAI-1TGマウスと正常マウス及びPAI-1KOマウスに心筋梗塞を作成し、時系列で心筋細胞(蛋白)を採取し心筋梗塞領域でのMMP活性をzymographyで測定した。PAI-1TGマウスでは正常マウスと比較し心筋梗塞後のMMP活性が有意に抑制されていた。一方PAI-1KOマウスでは心筋梗塞後のMMP活性が有意に増加していた。以上よりMMPs(MMP-9,MMP-2)活性の抑制が心破裂の抑制や心筋梗塞後急性期の修復過程での心筋リモデリングの抑制に関与している可能性が強く示唆された。 ●これらの研究結果の一部は日本循環器学会に抄録を掲載し学会報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度(平成22年度)科学研究費助成許可が同年度後半の追加許可となったため、本研究に関わるマウス輸入に初年度研究開始より10カ月以上の遅れが生じたため、本来の繁殖数を維持系統するのに時間を要し研究が遅延した。約半年の遅延を考慮していただくと概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
心筋梗塞後の心破裂に対してPAI-1発現は抑制的に作用していると考えられるが、このメカニズム解明のため以下の研究を行う予定である。PAI-1TGマウスの心筋梗塞モデルと正常マウス、PAI-1KOマウスを比較し、凝固線溶系との関係を考察するため、各時相でのPAI-1,uPA,Plasminogen-plasminの蛋白定量を行い、MMP活性との関係を明らかにする。更に血管基底膜に存在する細胞外マトリクス(1aminin,fibronectim等)の分解程度を組織学的に比較検討する。また、心筋梗塞後の好中球やマクロファージ等の炎症細胞浸潤との関係を明らかにするため、TNF-α,IL-1等のサイトカインとの関係も明らかにしていく予定である。
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