2011 Fiscal Year Annual Research Report
エラスターゼ誘起性杯細胞化生モデルを用いたCOPD過分泌治療法の開発
Project/Area Number |
22590844
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
近藤 光子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (50178430)
|
Keywords | エラスターゼ / 杯細胞化生 / ムスカリン受容体 / チオトロピウム / MUC5AC / 細胞内カルシウム |
Research Abstract |
昨年度は好中球エラスターゼを反復投与してマウスに杯細胞化生を作成し、M3抑制作用の強いムスカリン受容体阻害薬であるチオトロピウムを、吸入にて投与することにより杯細胞化生が抑制されることを証明した。本年度はさらにそのメカニズムを解明するため、培養気道上皮細胞を用いた粘液産生に対するin vitroの検討を行った。 粘液産生能を有するNCI-H292細胞にM3受容体が発現していることを免疫染色で証明した。次いで、コリン作働薬であるカルバコールで刺激したところ、MUC5ACの産生が容量依存性に増加した。この反応はチオトロピウムやイプラトロピウムにより有意に抑制された。さらに、Fura-2法を用いて、本細胞の細胞内カルシウム動態への影響を検討した。その結果、カルバコールは細胞内カルシウム上昇を惹起し、ムスカリン受容体阻害薬はこの反応を有意に抑制した。以上のことから、NCI-H292細胞のM3受容体は細胞内カルシウム上昇を通して粘液産生を引き起こすことが示唆された。次に、NCI-H292細胞にエラスターゼ刺激を行ったところ、有意に粘液産生が増加した。この反応はチオトロピウムやイプラトロピウムの前処置により、容量依存性に有意に抑制された。以上のことから、エラスターゼ刺激はNCI-H292細胞のM3ムスカリン受容体の活性化を通して粘液産生をもたらす可能性が示唆された。さらに、COPDの治療薬として現在期待されているphosphodiesterase4(PDE4)阻害薬やLTB4受容体阻害薬についても、エラスターゼ刺激による粘液産生への影響を検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vivoの実験に引き続き、in vitroの結果からも裏付けが得られており、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
粘液産生を中心に検討していたが、さらに粘液分泌の面からも初代培養杯細胞を用いて検討を試みる。粘液産生と粘液分泌の相互の関連性や共通する制御分子についても検討し、COPDの過分泌に対する新規治療法の開発に結びつけたい。
|