2011 Fiscal Year Annual Research Report
気道構成細胞の表現型変化に基づいた喘息分子薬理療法
Project/Area Number |
22590846
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
久米 裕昭 近畿大学, 医学部, 准教授 (50303631)
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Keywords | 気管支喘息 / フェノタイプ / 気道平滑筋 / 肺血管内皮細胞 / Rho-kinase / 低分子量G蛋白 / 好酸球 / 細胞遊走 |
Research Abstract |
気道構成細胞の遊走における表現型の変化と喘息の病態への関与について検索した。 1)肺血管内皮細胞における接着分子の発現の機序 喘息に関係するアレルギー反応によりマスト細胞から放出されるリゾリン脂質であるスフィンゴシン1リン酸(SIP)を培養ヒト肺微小血管内皮細胞(HPMVECs)に曝露すると、接着分子であるVCAM-1の発現が濃度依存性に増加した。VCAM-1の発現は曝露後からしだいに増加し、4-8時間後に最大となった。この現象は、RhoA(低分子量Gタンパク)の標的タンパクであるRho- kinaseの選択的阻害薬Y-27632を存在させるか、百日咳菌体毒素で6時間保温すると濃度依存性に抑制された。HPMVECsにSIPを曝露すると活性化したRhoAであるGTP-RhoAの著明な増加が認められた。さらに、SIPで曝露したHPMVECsの表面に好酸球を流すと。接着する細胞の割合が著明に増加し、Y-27632、百日咳菌体毒素の投与で接着する割合は有意に減少した。ゆえに、好酸球の気道への浸潤にはRhoA/Rho-kinase系による接着分子の発現が関与している。 2)気道平滑筋細胞の遊走の機序 エンドセリン(ET)は濃度依存性に培養ヒト気管支平滑筋細胞(HBSMCs)の遊走能を増強させた。この現象は気道平滑筋の収縮に必要な濃度に比べ、約100倍低い濃度で認められた。ETによるHBSMCsの遊走能の亢進はETの選択的阻害薬だけでなくY-27632の投与で濃度依存性に抑制された。ETをHBSMCsに曝露するとGTP-RhoAが有意に増加した。ゆえに、気道平滑筋の遊走能の亢進による気道リモデリングにはRho-kinaseに由来した細胞運動が関与している。 以上の結果より、喘息の病態にはRhoA/Rho-kinase系が重要な役割を果たしており、治療の標的分子であることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
気道平滑筋における収縮、弛緩などの反応性の変化(表現型の変化)について、Fura-2(カルシウム蛍光色素)で処理した組織を用いておこなう実験は、測定機器の故障が続いているため遅れています。システムが整いしだい進める予定です。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、気道構成細胞(気道平滑筋細胞、気道上皮細胞、血管内皮細胞、など)、あるいは、好酸球などの炎症細胞において、これまでに示した表現型の変化と細胞骨格再構築との関連性を検索する。さらに、感作動物を用いた実験を充実させ、RhoA/Rho-kinase系がこの疾患の分子薬理療法を確立するために重要な鍵を握っているか探求する。
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