2010 Fiscal Year Annual Research Report
フラボノイドが誘導するHO‐1を介した急性肺障害の新規治療法開発の基礎的検討
Project/Area Number |
22590856
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川部 勤 名古屋大学, 医学部, 教授 (20378219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 充代子 名古屋大学, 医学部, 助教 (10509665)
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Keywords | 非閉塞性肺疾患 / 肺線維症 / フラボノイド |
Research Abstract |
急性肺損傷/急性呼吸促迫症候群(ALI/ARDS)は肺内に過剰に集積した好中球による組織破壊が主たる病態であり、晩期には線維増殖も起こり、依然として薬物療法は確立していない。予備実験で確認していたフラボノイドが活性酸素による肺胞上皮の傷害や膠原線維の増生を抑制する機序について確実にした。具体的に実施した研究はまずケルセチンによるHO-1誘導能ならびに細胞保護作用についてin vitroで検討した。肺胞上皮細胞株および線維芽細胞についてケルセチンによるHO-1誘導能を明らかにした。次にケルセチンの組織・細胞保護作用については線維芽細胞を用いてTGF-βによる膠原線維産生についてリアルタイムPCR法にてmRNAレベルならびにSircolアッセイによりタンパク質レベルで検討し、ケルセチンはTGF-βによる膠原線維産生をmRNAならびにタンパク質レベルで抑制することを明らかにした。このケルセチンによる膠原線維抑制効果の機序が細胞内シグナル伝達系に及ぼしている影響を検討した。 TGF-βシグナル伝達のSmadの系およびnon-Smadの系の主たるMAPKの系のリン酸化をみたが、Smadのリン酸化にたいしてケルセチンは影響を持たなかった。しかしケルセチンはERKおよびJNKのリン酸化の著明に亢進し、阻害剤を使用して調べたが、関連は認められなかった。ケルセチンの抗原線維発現抑制の機序についてはSmadおよびMAPKの系以外のシグナル伝達の系であると考えられた。さらにケルセチンによるHO-1誘導における転写因子nuclear factor-erythroid 2 related factor 2(Nrf2)の関与について免疫染色法によりNrf2の核内移行を確認しNrf-2の関与の傍証を得た。同様の検討はヒトの肺線維芽細胞においても検討した。以上については米国胸部疾患学会雑誌Am J Respir Cell Mol Biol.の2011年5月号(44巻:614-20)に掲載されました。
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