2011 Fiscal Year Annual Research Report
血中分子シグネチャ解析法の開発と難治性呼吸器腫瘍診断への応用
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22590858
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柳澤 聖 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (20372112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有馬 千夏 名古屋大学, 医学系研究科, COE特任助教 (00534843)
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Keywords | 肺癌 / 悪性胸膜中皮腫 / プロテオミクス |
Research Abstract |
本研究では、先進的なプロテオミクス技術を用いて、組織検体を対象とした網羅的タンパク質発現解析を遂行し、疾患特異的分子群を特定し、新規診断法の開発へと昇華させることを目指している。さらには、精密且つハイスループットに複数の診断マーカー分子を同時解析可能なポテンシャルを持つMRM技術を基盤とした先進的プロテオミクス技術を、バイオインフォマティクス解析手法とともに統合的に応用することにより、発現プロファイルに基づいた革新的診断システムを開発し、疾患の超早期発見及び治療個別化の実現を目指している。 本年度は、悪性胸膜中皮腫組織試料を対象とした、タンパク質発現解析を行い、診断マーカー候補分子を8種類特定した。これらの分子に対してMRM解析系の構築を進め、中皮腫症例由来の血液試料を用いた検討を行ったところ、1分子について診断マーカーとしての有用性が強く示唆される結果を得た。このため、実地臨床に広く還元可能な特異的高感度解析法であるELISA系の構築を行い、悪性胸膜中皮腫21例、肺癌116例、非癌呼吸器疾患56例由来の血清試料を対象とした検証実験を進めた結果、悪性胸膜中皮腫の診断感度81.0%、特異度93.6%と、高い診断有用性が示唆される結果を得た。 また、肺癌マーカー候補タンパク質の同定を目指して、76例の肺癌及び正常肺新鮮凍結組織から抽出したタンパク質を解析試料とした網羅的タンパク質発現解析を行った。約5000種類のタンパク質の発現情報を取得し、癌と正常組織間に平均±2SD以上の発現変動を認めるマーカー候補タンパク質に加えて、肺がん術後予後との関連が示唆されるタンパク質群の存在を確認している。これらのマーカー候補タンパク質の存在量を、血液試料中で精密に定量する目的で、個々のマーカー候補分子対してMRM解析系の構築を進め、現在100種類以上の分子の解析法を確立している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究では、難治性呼吸器腫瘍の新規血液分子診断法の開発を主たる目標としており、現在までに、悪性中皮腫を対象とした研究において、新規診断マーカー候補分子の特定とその精密解析系の構築に成功している。また、プロファイルに基づいた分子診断法開発に関して、基盤情報である肺癌を対象とした網羅的タンパク質発現解析をほぼ完了しており、血液中のマーカー分子解析系の構築も若干の遅れはあるものの進捗が認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
悪性胸膜中皮腫新規診断法の開発に関しては、他癌腫症例から供与を受けた試料を対象にして、新規診断マーカー分子の発現解析を進めることにより、疾患特異性の評価を行う。それに並行して、多施設共同で新規診断法の臨床開発を目指した研究を立案し、十分な中皮腫症例の蓄積を行い、有用性を確認した後に、実地臨床への導入を進める計画である。 プロファイルに基づいた肺癌術後予後推定法の開発に関して、血液中のマーカー分子のプロファイル解析を可能とするMRM解析系の構築を完了し、血液試料を対象とした発現解析を行い、バイオインフォマティクス解析による診断プロファイルの抽出から、検証実験へと進める計画である。
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Research Products
(7 results)