2011 Fiscal Year Annual Research Report
急性呼吸不全における低分子G蛋白Rap1の役割と治療応用の可能性
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22590872
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田坂 定智 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70276244)
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Keywords | 急性呼吸不全 / 低分子G蛋白 / 接着分子 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
平成23年度は主に、培養細胞にsiRNAを導入してRap1の発現をノックダウンすることにより細胞の機能にどのような影響が出るかを検討した。Rap1遺伝子に相補的なヌクレオチド長の短い干渉RNA(siRNA)を作成し、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)および気道上皮細胞(Bes2b)に導入した。 導入後の細胞を低酸素環境に置き、Rap1および関連する分子であるRhoA、Rasなどの遺伝子発現が減弱することを確認した。またこれらの発現は蛋白レベルでも低下していた。Rap1に対するsiRNAを導入した細胞では、様々な濃度のエンドトキシン(LPS)で刺激をしてもRap1、RhoA、Rasの発現亢進は見られなかった。 アデノ随伴ウィルスベクターにRap1に対するsiRNAを発現させ、マウスの気道内に投与した。摘出した肺でRap1遺伝子発現を評価したところ、発現は確認できなかった。また気道内投与後に低酸素曝露を行ったが、Rap1の肺内での発現は確認できず、ノックダウンが成立しているものと考えられた。 臨床研究として、呼吸不全患者において、気管支鏡的マイクロサンプリング法で気道上皮被覆液を採取し、Rap1、RhoA、Rasをウェスタンブロット法で評価した。一部の患者でこれらの分子の高発現が見られたものの、呼吸器系の基礎疾患の有無や呼吸不全の程度、酸素投与量による一定の傾向は認めなかった。また肺炎や全身性炎症反応症候群(SIRS)の有無により一定の傾向を示すこともなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成22年度に培養細胞のノックダウンの実験系を確立するのに時間を要したことが最大の要因と考えられる。平成23年度についてはほぼ計画通りの進行であり、当初予定された達成度に近づきつつあると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体については、一定の傾向が見られないため、平成24年度には症例の追加を行わないこととする。その分、ウィルスベクターを用いた抑制実験に注力し、ベクターの量反応関係や炎症性刺激の存在下における抑制効果について、研究期間内に一定の知見を集約することを目指す。
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