2011 Fiscal Year Annual Research Report
水素分子の抗酸化力を利用した肺疾患の新しい治療と予防
Project/Area Number |
22590873
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
寺崎 泰弘 日本医科大学, 医学部, 講師 (50332870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 悠 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60097037)
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Keywords | 酸化ストレス / 水素還元力 / 放射線肺障害 / 抗酸化作用 / アポトーシス / ハイドロキシラジカル |
Research Abstract |
水素(H2)分子独特の抗酸化作用はin vitroでH2がヒドロキシラジカル(・OH)、パーオキシナイトライト(ONOO-)などの強い活性酸素種を選択的に還元する事とH2分子が生体膜を速やかに通過する事などの利点が考えられ、様々な酸化障害モデルで抗酸化による障害抑制効果を示しており、副作用の少ない抗酸化剤としてその臨床応用が期待されている。一方、多様な呼吸器疾患の病態には酸化ストレスの強い関与が示唆され、その効果的除去は疾患治療の新たな手段となる。本研究ではH2の臨床応用を念頭におき各種の障害モデルを用い種々の肺疾患の病態でのH2処理による抗酸化効果に伴う酸化ストレス障害抑制効果の検討を目的とする。平成23年度は、急性酸化障害に対するH2処理の抗酸化効果を解析する目的で、放射線障害において特に・OHが主要な障害活性酸素種である為、放射線肺障害でのH_2分子治療の保護効果を培養細胞と動物モデルを用い検討し以下を論文として報告した。ヒト肺胞上皮細胞A549に放射線照射で産生される・OHはESR、蛍光試薬HPF解析にてH_2処理群(H_2溶解培地)で低下し、酸化ストレスマーカーの8-OHdGや4HNE染色やアポトーシスマーカーのactive caspase3,Baxのウエスタンブロット解析でもH_2処理群に抗酸化や抗アポトーシス効果を認め細胞生存率が上昇した。特にミトコンドリアでのBaxの発現を抑制していた。放射線肺障害マウスモデルでも8-OHdG染色やMDA解析またTUNEL染色、Baxのウエスタンブロット解析から放射線肺障害後1週間内の急性期でH_2処理群(3%H_2吸入、H_2飲水)に抗酸化や抗アポトーシス効果を認めた。胸部CT画像解析や肺組織のEMG染色、3型コラーゲン染色により放射線肺障害後5ヶ月の慢性期でもH_2処理群の線維化減少を認めた。H_2分子治療は放射線の活性酸素種による肺障害に抑制効果があることが示唆された。効果、毒性、耐性、選択性などから、臨床的に有効な理想的な放射線障害防御剤は見いだされていない為、独創的な放射線障害防御方法としてH2分子は副作用のない治療として有用と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主に急性酸化障害に対するH2処理の抗酸化効果を解析する目的で、放射線障害において特に・OHが主要な障害活性酸素種である為、放射線肺障害でのH_2分子治療の保護効果を培養細胞と動物モデルを用い検討したが、H_2分子治療は放射線の活性酸素種による肺障害に抑制効果があり英文論文として報告する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
他の肺病態でのH2処理による抗酸化効果に伴う酸化ストレス障害抑制効果の検討を目的とする意味で、酸化傷害の病態が関わるとされるブレオマイシン肺傷害、線維症モデル(培養細胞、マウスモデル)および肺気腫モデルとしてSAMP1マウスを用いH_2処理(H_2溶解培地、3%H_2吸入、H_2飲水)による抗酸化効果に伴う酸化ストレス障害抑制効果、保護効果を同様に検討する。
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