2011 Fiscal Year Annual Research Report
非喫煙者肺がんにおける発癌分子機構の解明とその制御
Project/Area Number |
22590874
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
岡野 哲也 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (00339376)
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Keywords | マイクロRNA / 非喫煙者肺がん / プロテオーム |
Research Abstract |
本研究は、非喫煙者肺がん発生におけるmiRNAの果たす役割を解明するため、非喫煙者肺がんのmiRNAの発現プロファイル解析で、特に発癌との関連が示唆される因子についてin vitroで機能解析を行い、さらに非喫煙者肺がんに頻度が多いとされているEGFR遺伝子変異が果たすmiRNAの発現制御機構を明らかにすることを目的とする。具体的には、非喫煙者肺がん症例で特異的なmiRNAの発現変化を示したmiR-138の標的遺伝子候補の検討を行った結果、肺がんを含む様々ながん種の発癌・腫瘍増殖に関与しているhuman telomerase reverse transcriptase gene(hTERT)がターゲット遺伝子候補としてあげられた。また、機能解析においてmiR-138の発現をoverexpressionすることでhTERT遺伝子の発現を負に調整し、siRNAを用いたKnockdownではhTERT遺伝子発現が亢進することを見出した。今年度は、miRNAの発現とEGFRシグナルとの調整機構を解明するために、EGFR遺伝子変異に関したmiRNA発現プロファイルで最も発現上昇を認めたmiR-21とEGFRの下流のシグナル因子(Akt,STAT3,c-Junなど)との関連について解析を行った。肺癌細胞株においてmiR-21のoverexpressionやsiRNAを用いたKnockdown解析では、p-Aktやp-STAT3の発現が変動しないことが確認できた。さらにAkt,STAT3,c-JunのKnockdownによるmiR-21の発現変動を調べると、siRNAを用いたAktとSTAT3のKnockdownでは有意な発現の変化を認めなかったが、c-Junにおいては、miR-21の発現低下が認められた。miR-21の発現調整には、EGFR-JNK/c-Junシグナル伝達経路の関与が示唆された。今後は、EGFR発現肺がん細胞株を用いてanti-miR-21により変化するタンパク質発現を網羅的に検討する予定である。本研究では、非喫煙者肺がん発生におけるmiRNAの果たす役割を解明することで、得られた知見をもとに応用可能な予防法や治療法の開発が期待できると考えられる。また、非喫煙者肺がんに頻度が多いとされているEGFR遺伝子変異に関連したmiRNAの解析については、現在、肺がんの化学療法で問題となっているEGFR Tyrosine Kinase Inhibitorの耐性化のメカニズムの解明やその克服の糸口となる可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EGFRシグナルとの調整機構を解明するために下流のシグナル因子(Akt,STAT3,C-Junなど)との関連を解析する。miR-21の発現をsiRNAを用いたKnockdownではAkt,STAT3の発現の変動が認めず、さらにAktとSTAT3のKnockdownにおりてもmiR-21の発現の変動は認めず、予想外の結果であっために、他のEGFR下流シグナル検討を行ったために計画推進がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
EGFR遺伝子変異に関したmiRNA発現プロファイルで最も上昇を認めたmiR-21とEGFRシグナルとの調整機構を詳細に調査するため、anti-miR-21により変化するタンパク質発現を網羅的に検討する。また、研究代表者らの研究でEGFR遺伝子変異を認める肺癌と野生型との2群間で有意な発現差を認めるタンパク質は同定されている。それらのデータを利用して比較検討を行う予定である。
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Research Products
(3 results)