2010 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック異常を標的とした新規慢性腎臓病治療法の開発
Project/Area Number |
22590879
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸茂 丈史 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70265817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平橋 淳一 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70296573)
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Keywords | エピジェネティクス / 慢性腎臓病 / HDAC |
Research Abstract |
エピジェネティック機序は、障害・防御因子の発現調節を介して臓器修復反応に関与している。我々は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の抑制が腎保護作用を発揮することを報告してきた。本研究では、慢性腎臓病でのヒストン修飾およびDNAメチル化の変化を明らかにし、それを標的とした治療を開発することを目的にしている。本年度は、尿細管間質障害モデルを用いた検討を中心に研究を進めた。尿管を結紮したUUOモデルではHDAC1,HDAC2の発現が上昇することを我々は報告している。本年度は、新たにHDAC阻害作用がその薬理作用として注目されているバルプロ酸が、UUOでみられる腎臓尿細管間質障害に対して有効であるかどうか検討した。バルプロ酸は飲水に混じて投与し、腎臓は組織学的におよび炎症・線維化関連遺伝子発現について検討した。さらに、培養尿細管細胞NRK52E細胞のケモカイン発現に対するバルプロ酸の効果を検討した。その結果、障害腎でのcollagen la,alpha SMAmRNAの増加ならびにマクロファージマーカーF4/80 mRNAの増加はバルプロ酸で有意に低下し、腎組織は改善傾向を示した。一方、障害腎で低下したBMP-7の発現は増加傾向であった。バルプロ酸は培養尿細管細胞のBMP-7の発現を著明に増加させTNF-alphaによるケモカインCSF-1の誘導を抑制した。これらのバルプロ酸の作用は構造の異なるHDAC阻害薬トリコスタチンとほぼ同一であった。以上の検討から、臨床的に用いられているバルプロ酸はHDAC阻害作用を介して腎臓尿細管間質障害に対して有効であることが示唆された。さらに次年度にむけて、ヒストン修飾、DNAメチル化とその修飾酵素の変化の検討を進めている。
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Research Products
(3 results)