2011 Fiscal Year Annual Research Report
傷害を受けた糸球体上皮細胞に発現するトランスゲリンの機能と発現メカニズムの解明
Project/Area Number |
22590882
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
坂爪 実 新潟大学, 医歯学総合研究科, 非常勤講師 (70334662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 毅 新潟大学, 保健管理センター, 准教授 (00372475)
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Keywords | 腎臓内科学 / 腎組織障害 / 糸球体上皮障害 / SM22α / Transgelin / バイオマーカー |
Research Abstract |
本研究の目的は、Transgelin (SM22α)の機能解析とその発現メカニズムを解明するとともに、シグナル伝達経路から治療の標的となる分子を選び出し、新しい治療法の開発に繋げることが目的である。またTransgelinの測定系を確立して糸球体上皮細胞障害検出システムを構築することを目的とする。本年度は1)上皮細胞障害と尿細管間質障害を併発し進行性の腎病態であるラットアドリマイシン(ADR)腎症を用いて、複雑な腎障害の病態でどのような要因がTransgelinの発現に関与するのかを解析した。また2)ヒト腎疾患でのSH22αの発現を組織学的に検討し、その病理学的意義について検討し、3)ヒト腎疾患患者尿での測定系の確立に向けてシステムの検討を行った。 論文発表を完了した成果として、進行性複合的腎症であるADR腎症ラットでは、発症早期に糸球体上皮細胞でTransgelinは発現し、晩期には間質細胞にも発現した。糸球体上皮細胞では、基底膜に接した細線維が高密度に凝集した部分に発現が認められた。腎機能指標Ccrと尿細管間質におけるTransgelin陽性面積、また尿蛋白量と糸球体におけるTransgelin陽性面積が強く関連した。腎組織全体におけるTransgelinの発現量は腎機能指標Ccrが低下するほど大きくなることがわかった。Transgelinは傷害を受けた腎細胞に発現し、腎障害が進行するほど発現が増加することが判明した。さらにヒト腎疾患においても同様の発現様式をとることを見出し、尿中Transgelin蛋白の定量測定とともに尿アルブミンのRedoxバランス、臨床データと比較して解析し論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト腎疾患患者尿での測定系としてこれまでに用意した抗体がELISA系に適さないことがわかり、作成した抗体を全てチェックし直し、ELISAに用いる抗体の組み合わせの検討に時間を要した。またノックアウトマウスでの腎病態解析では、ワイルドタイプ、ヘテロ接合体での腎病態と比較してわずかな変化のため、病態に与えるTransgelinの役割を考察、検証するのが難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ノックアウトマウスを用いたTransgelinの腎病態における役割の解析は、Shankland SJらのグループにより先んじて発表された(Am J Physiol Renal Physiol.2011 ; 300(4) : F1026-4)。これまでの私たちの検討結果と矛盾しないものである。このため今後は、細胞内での発現メカニズムの検討と細胞生物学的な役割を優先的に検討することとする。 またTransgelin測定の臨床的な有用性を検証し、臨床応用へ向けたシステムの確立を急ぐこととする。
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Research Products
(4 results)