2011 Fiscal Year Annual Research Report
一般住民における血清シスタチンC値と心血管病発症の関係:久山町研究
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22590892
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
二宮 利治 九州大学, 大学病院, 助教 (30571765)
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Keywords | シスタチンC / アルブミン尿 / 糸球体濾過値 / 動脈硬化 / 心血管病 |
Research Abstract |
平成23年度は、血清シスタチンC値、糸球体濾過値(eGFR)、尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR)の3つの腎障害マーカーと心血管病発症との関係を検討した。平成14年の久山町における循環器健診を受診した40歳以上の久山町の一般住民3,328人(久山町第4集団、受診率78%)のうち、研究への参加への非同意者、心血管病既発症者、血液・尿サンプル未採取の者を除いた3,041名を平均7.1年間追跡した。追跡期間中に154名の心血管病発症を認めた。初めに血清シスタチンC値の4分位値(<0.65、0.65-0.71、0.72-0.81、>0.81[単位mg/L])別に心血管病の発症率(対1000人年)を検討したところ、それぞれ2.8、5.8、4.4、17.2と血清シスタチンCの上昇に伴い直線的に増加した(p for trend<0.001)。eGFR、UACRについても同様の解析を行ったところ、eGFRの低下及びUACRの上昇に伴い、心血管病の発症率は上昇した(eGFR[単位m1/分/1.73m2]:≧90.8、5.5;77.8-90.7、6.6;66.7-77.7、6.1;<66.7、11.6;p for trend=0.001;UACR[単位mg/g]:<5.28、3.7;5.28-9.93、3.0;9.94-22.16、7.8;>22.16、15.7;p for trend<0.001)。しかしながら、年齢、性、高血圧、糖尿病、血清総コレステロール値、血清HDLコレステロール値、血清中性脂肪値、高脂血症薬服用、肥満、心電図以上、喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣で多変量調整を行ったところ、血清シスタチンC及びeGFR値と心血管病発症の間に有意な関連を認めなかった。一方、UACRの上昇に伴い心血管病発症の相対危険は有意に上昇した(<5.28、1.00;5.28-9.93、0.78;9.94-22.16、1.67;>22,16、2.33;p for trend<0.001)。以上の成績から、3つの腎障害マーカーの中で、UACRと心血管病発症との関連が最も強いことが示唆された。なお、心血管病の病型別解析や他の危険因子による層別解析などの詳細な解析を行うには、発症数が不十分であった。 さらに本研究では、上述の久山町第4集団の追跡調査を本年度も継続した。この追跡調査では、健診、健診未受診者および転出者に対するアンケート調査、町内外の病院における医療記録や画像診断等の臨床情報の収集、剖検による死因の同定を行った。今後は、この追跡調査の成績をもとに追跡期間を平成14年から平成23年の9年間に延長し、上述の3つの腎障害マーカと心血管病発症や死亡との関係に関する詳細な検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究結果は予定通り出ているが、更なる詳細な解析を行うには、心血管病の発症数が不十分であったため、追跡期間を更に延長する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の発症者の追跡調査を完了し、研究対象者の追跡期間を平成14年から平成23年の9年間に延長する。これにより、発症者数が増加し、3つの腎障害マーカと心血管病発症や死亡との関係に関する詳細な検討を行うことが可能となると思われる。
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Research Products
(1 results)